Mrs. GREEN APPLE、なぜ歌詞に“愛”を多く使うのか? 現代のリスナーに枯渇している自己愛を歌う意味
昨年のBillboard JAPAN年間総合ソング・チャート「Hot 100」トップ10に4曲もの楽曲がランクイン(※1)するなど、2024年はバンドとしてこれまで以上に飛躍の年となったMrs. GREEN APPLE。彼らの楽曲の歌詞には〈愛〉というフレーズが頻出する。これまでも数多のアーティストが歌ってきた〈愛〉というテーマ。音楽における永遠のテーマとも言える〈愛〉を、Mrs. GREEN APPLEはどう歌ってきたのか。そして、彼らは〈愛〉をどのようなものとしてとらえてきたのだろうか。
まずピックアップしたいのは、「日本レコード大賞」を2023年に受賞した「ケセラセラ」。Mrs. GREEN APPLE初となるドラマ主題歌となった同曲では〈私を愛せるのは私だけ。〉というフレーズが印象的に歌われる。「ケセラセラ」とは、スペイン語で「なるようになる」という意味だ。「なるようになる」と自分自身を鼓舞することで、自分自身を愛そうというメッセージが「ケセラセラ」には込められている。Mrs. GREEN APPLEの楽曲における〈愛〉は、自己愛、つまり自分自身を愛そうという意味合いで登場することが多いのだ。
2年連続で「日本レコード大賞」を受賞することとなった「ライラック」。この楽曲は、Mrs. GREEN APPLEの新たな代表曲となった。注目したいのはサビの〈痛みだす人生単位の傷も/愛おしく思いたい〉というフレーズだ。自分の深い傷すらも愛そうというこのフレーズは、その先の〈何を経て 何を得て/大人になってゆくんだろう〉にも連なる。辛さをも呑み込むことで大人になるのだと、Mrs. GREEN APPLEは「ライラック」を通して語りかけている。〈不安だらけの日々でも/愛してみる〉〈答えがない事ばかり/だからこそ愛そうとも〉というフレーズは、過去の傷だけでなく、先の見えない人生も自分自身を構成する要素として愛そうと歌い、その果てに〈僕は僕自身を/愛してる〉とポジティブな自分自身も、ネガティブな自分自身もすべて愛で肯定してみせている。このセルフラブは、きっとMrs. GREEN APPLEの、作詞を手がける大森元貴(Vo/Gt)の価値観そのものとも言えるだろう。
Mrs. GREEN APPLEにとって18曲目のストリーミング累計再生回数1億回突破楽曲となった「コロンブス」では、〈まだまだまだ/気づけていない/愛を飲み干したい 今日も〉というフレーズが登場する。このフレーズの前段で歌われる〈不安だけど/確かなゴールが、/意外と好きな日常が、/渇いたココロに/注がれる様な〉という箇所では、不安さと確実性、日常と意外性といった相反する要素が心を豊かにするのだと説いている。そんな自分自身の心を豊かにする行為こそが、自分自身を愛する=〈愛を飲み干したい〉ということなのだと思う。