Caravanの“原点”で振り返る20年前に生まれた2作 二つの恒例行事『新年祭』『HARVEST PARK』も語る

2025年2月2日川崎CLUB CITTA'にて、Caravanの毎年恒例行事であるワンマンライブ『新年祭』が行われる。2月の頭の節分に近い休日に開催、場所はチッタ、来場者全員に振る舞い酒が配られる、という特別な形で始まって、今回で11回目。今回は、デビュー20周年のさまざまな活動の締め、かつ、インディーズリリースした最初の2作『RAW LIFE MUSIC』と『Trip in the music』がアナログ盤でリリースされることもあり、この2作の楽曲が多数演奏されるライブになることが、あらかじめアナウンスされている。
なおCaravanには、この『新年祭』のほかにも、もうひとつ、活動の大きな軸になる、毎年恒例のイベントがある。2023年11月3日に一回目を開催、2024年11月3日の二度目の開催も成功に終わった、地元茅ヶ崎の里山公園で行っている『HARVEST PARK』である。
二度目の『HARVEST PARK』が終わったばかりなので、まずはその話、続いて『新年祭』の話を聞いた。なお、このインタビューと撮影が行われたのは、Caravanが世に出るきっかけになった場所であり、現在もよく出演している横浜サムズアップ。20周年の活動の一環として制作され、2024年に「上映とアコースティックライブ(もしくはトーク)」という形で、本人と共に全国を巡ったドキュメンタリー映画『My Life as Caravan』にも、この場所と店主が登場している。(兵庫慎司)
茅ヶ崎への恩返しを形にしたイベント『HARVEST PARK』への挑戦

ーーそもそも『HARVEST PARK』を始めようと思ったのは?
Caravan:コロナ禍が、ひとつのキーになっていて。あの頃、ライブが全然できなかったじゃないですか。そんな時に、茅ヶ崎の山の方で、畑をやっている僕の親友が「畑に遊びに来れば? けっこう気分変わるよ」と言ってくれて、行く機会が増えていったんですよね。そうしているうちに、「お米を作りたいんだけど、うち、ふたりだけだからちょっときついんだ。Caravan家が手伝ってくれるんだったら……」と言われて。一緒にお米を作るようになったら、いろんな意味で、ポジティブな気持ちにさせてもらえたんです。当時のテレビでは、不安なニュースがいっぱい流れていて。でも田んぼに行くと、前回行った時よりも確実に稲が伸びていて、めっちゃ平和なんですよ。蝶々は飛んでるわ、鳥は羽ばたいてるわ、微生物いっぱいいるわ。なんかね、「大丈夫だな」みたいな気になれて。結局ワチャワチャしてるのは人間だけで、それ以外の生物は、至って健康じゃん、と思って。目先のニュースとか世論に、流されなくなったというか。それで、無観客の配信ライブとか、お客さんを半分入れたライブとか、やりたいことを積極的にやろうと、気持ちを切り替えられたというか。
ーー重要な出来事だったんですね。
Caravan:はい、すごくいいきっかけをくれたんです。そんな中、僕は茅ヶ崎の海の方に住んでるんですけど、山の方で田んぼだの畑だのをやっていたら、不法投棄の問題がひどくて。僕の友達は不耕起栽培をやっているんですけど、ペンキの缶が捨てられたり、ガソリンが入ったままのスクーターが倒れていたり。そんなものがあれば一発で、何年もかけて畑を作ってきた苦労がパーになってしまう。海辺は観光地なので、美化財団があって、ゴミとかを回収してくれるんですよ。ところが山側は、不法投棄された側が、自分でお金を払って処分しに行かなきゃいけない。すごく理不尽というか。そういうことはやめようよ、というアクションをできないかな、コロナ禍の頃にいっぱいパワーをもらったので、自分なりにできる恩返しをしたいな、っていうのもあって、『HARVEST PARK』を始めました。
ーー初回はいかがでした?
Caravan:やってみたら、大変だけど楽しくて。まあ楽しくやらないと、メッセージも届かないじゃないですか。押し付けとかお説教になっちゃうとね。まず自分たちが、論ずるより行動で示して、楽しんで問題を解決していく、っていうのを見せられたら、変わるんじゃないかなと。そんなんしてたら、去年(二回目)は、市長が遊びに来てくれたり、行政の方々も興味を持って近づいて来てくれて。
ーー一回目の大変さって、どんなところが?
Caravan:一回目は、自分たちも、何が正解かわからないし……でも、とにかくフリーでやりたかったので。そもそも会場の公園が、茅ヶ崎の人はみんな子供の頃から行くような、街の憩いの場所なんですよ。そこを、この日はチケットを持っていないと入れない、っていうふうにするのは、ちょっと違うだろうと。

ーー日本中のあらゆる音楽フェスが、普通にそれをやっていますけど(笑)。
Caravan:でも、自分たちがあの場所でそれをやるのは、違和感があったので。『××フェスティバル』ではなくて、公の場所にしたいなと。普段公園に来ているおじいちゃんとか、ラジオ体操しているおばあちゃんとかが、「あ、今日はなんかにぎやかね」と思ってくれるような。そういう人もいたり、音楽を聴きにくるミュージックラバーもいたり。そこに僕らの知り合いで、湘南界隈には、小さいけど個性とこだわりを持ってやっているお店がいっぱいあるから。そういう人たちでマーケットを出して、利害関係じゃない商店街みたいなものを、ここに1日だけ作りたいな、というのがあって。
で、僕の好きなアーティストや、そういう気持ちに賛同してくれる人たちにーー音の問題もあるので、アコースティックでライブをできる人に限られちゃうんだけどーー参加してもらって、そういう世界ができたらいいなと。あとは、ウクライナのことだったり、イスラエルのことだったり、戦争がいつまでも終わらない状況もあって。何か、1日だけ、誰かの利害とか勝ち負けとかじゃなくて、ただただ拓かれた、誰でも来れる、平和な公園を作りたいな、と思って始めた感じはありますね。まあ、1年目はほんとバタバタで、気がついたら終わってた、みたいな感じだったんですけど。
ーー2年目は?
Caravan:2年目も気がついたら終わってました(笑)。あと2年目は、前日まで大雨だったんですよ。その中で設営をしながら、すっごくヒヤヒヤして……初年度は、中止になった時のために保険に入ったんですよ。でも2年目は、うっかり入ってなくて……。
ーーなんで(笑)!
Caravan:どうしようかと思ったけど、当日はスコンと晴れてくれてよかったです。統計的に、年に何日か、関東は雨が降らない日っていうのがあるんですよ。その中でも特に11月3日は、いちばん雨が降らないという説もあって。それなのに前日まで雨だったから「俺が関わるとダメなんだ」とか思ったけど(笑)。
ーー協賛企業のブースも、いくつも出ていましたよね。
Caravan:ほんとはもっといろんな方が、「関わらせてほしい」と声をかけてくれたんですけど。でもやっぱり、営業感があったり、自分の利益しか見ていないように感じてしまうようなケースもあって。そういう場合はやんわりとお断りしました。「利害関係じゃない」という趣旨とずれてしまうので。ブース出店や協賛をしてくれた企業は、こちらから「こういうことをやるんですけど、賛同してもらえませんか」と話を重ねて深い所で共鳴してくれた企業ばかりです。
