ザ・ウィークエンドらも魅了する、R&B/ヒップホップとシティポップの親和性 海外で引用される理由は?
アーバンは禁句? タブーが置き換えられたシティの魅力
シティポップを形容するときに度々用いられる“都会的”というワード。英語にすれば“アーバン”とも置き換えられるが、この“アーバン”は、現在アメリカの音楽市場で用いるのはタブーとされている。1970年代中期〜0年代にニューヨークのラジオDJ、フランキー・クロッカーにより、ブラコンに代表されるような文字通りの“都会的”な音楽を指す謳い文句として使われ始めたが、時代を経て“黒人音楽”そのものを指す意味合いとして変化。黒人が作った音楽が否応なく“アーバン”に分類され、非黒人によるサウンドは“アーバンでない”と認識されるなど、人種差別を誘発する時代遅れの言葉になってしまった(こと音楽ジャンルを表す言葉としては)。
日本人からする“アーバン”に上記のネガティブなイメージは少なく、かつてフランキーが描いたときめく感覚が残されているはず。そして我々が“アーバン”に感じる言葉の魅力は、アメリカ人からすると“シティ”に気兼ねなく置き換えられるのかもしれない。仮にシティポップが“ジャパニーズ・アーバン・ソウル”という名前で呼ばれていたら、英語圏でここまで大々的な発展はあっただろうか。当のアーティストたちがシティポップという名称を気に入っているかどうかはさて置いても、ネーミングの役割は大きい。
海外のリスナーから“キング・オブ・シティポップ”と崇められる山下達郎による1980年のアルバム『COME ALONG』は、小林克也がナレーションを務めるDJミックスシリーズとして有名な作品だが(元々はレコードショップの販売促進用CD)、架空のラジオ局というコンセプトでは『Dawn FM』にも通ずる部分がある。同年にリリースされ、山下達郎が本格的なブレイクを果たしていくきっかけともなった「RIDE ON TIME」は、maxellのカセットテープCMにもタイアップ起用され話題に。CMのキャッチコピーは「いい音しか残れない。」だった。約40年の時を経た今、シティポップはその文言を音楽の力のみで世界に証明してみせている。