国内外で注目集めるジャパニーズ・シティポップ コンピ盤『ALDELIGHT CITY』点と点を線で繋ぐ試み

『ALDELIGHT CITY』レビュー

 新レーベル、ALDELIGHTからこのほどリリースされた2枚組CD『ALDELIGHT CITY -A New Standard For Japanese Pop 1975-2021-』は、ジャパニーズ・シティポップをめぐる現況を踏まえたとても興味深いコンピレーション。サブタイトルの『-A New Standard For Japanese Pop 1975-2021-』が示すように、国内外のシティポップファンの間でさまざまなアンテナに引っかかっている楽曲を、過去のカタログという“点”ではなく、現在から伸ばした“線”で考えてゆくというアプローチだ。

 選曲はすべて<ソニーミュージック>のカタログから。70~80年代を通じて、<ソニーミュージック>の旧形態である<CBS・ソニー>、<EPICソニー>の両レーベルは、もともとシティミュージックへの関与が大きかったし、現在はそこに<アルファレコード>、<RVC>などの豊富なカタログも加わる。ディスク1では、まず過去のシーンに同時代で関わり、今現在、大きく再評価されているオリジネイターたちの70年代~80年代の楽曲を中心に16曲。そしてディスク2では、逆に2021年にRainych × evening cinemaがカヴァーした「RIDE ON TIME」(原曲は1980年、山下達郎)を起点に、90年代から2020年代へと至るシティポップを繋ぎ止めていた“点”を“線”として15曲で明確化させた。

 またディスク1のYellow Magic Orchestra「君に、胸キュン。-浮気なヴァカンス-」(1983年)や、ディスク2の真心ブラザーズ「ENDLESS SUMMER NUDE」(1997年)など当時大ヒットした曲で、シティポップとして論じられることがほとんどなかった曲であっても「現代の視点ではこれもシティポップになる」という“気付き”への導線も仕掛けられているのが面白い。ディスク2での、シンディや比屋定篤子、GWINKO、The CHANG、葛谷葉子、古内東子なども隠れた名曲を丁寧に拾い上げて、的確に配置してある。時代と誠実に向き合ったアーティストの在り方やスタッフワークの重要性と遊び心がどの曲にも感じられ、単に流行に便乗したマニアックな詰め合わせになっていないのがいいところだ。

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