連載「lit!」第147回:原口沙輔、サツキ、柊マグネタイト、吉田夜世……シーンの最前線に立つボカロP新曲4選
音楽業界の主要5団体(日本レコード協会、日本音楽事業者協会、日本音楽制作者連盟、日本音楽出版社協会、コンサートプロモーターズ協会)が新たに立ち上げた一般社団法人カルチャーアンドエンタテインメント産業振興会(CEIPA)による国内最大規模の国際音楽賞、『MUSIC AWARDS JAPAN』。
その第1回受賞作候補となるノミネート作品が先日発表されたが、その中には“最優秀ボーカロイドカルチャー楽曲賞”も設けられており、VOCALOIDという音楽カルチャーがれっきとした日本の音楽文化の一端を担うものとなっていることをあらためて実感した者もいたのではないだろうか。ノミネート作品の中には現シーンの第一線を走るボカロPの楽曲から、本アワードは2024年2月第1週(1月29日)~2025年1月最終週(1月26日)に各種チャートにランクインした作品/アーティストで「リリース時期は不問となり旧譜も対象」となるため、過去にカルチャーの知名度を一躍押し上げた立役者的名曲「千本桜」(黒うさP)まで、幅広い楽曲がノミネートされている。
そこで今回は、ノミネート作品に名を連ねたクリエイターたちの最新楽曲を計4曲ピックアップ。なお、黒うさPに関しては表立ったボカロP活動を現在は行っていないが、将来的な活動再開への希望を託しつつ、“今”のVOCALOIDカルチャーの最前線を、注目すべきクリエイター陣の新作から探っていきたい。
原口沙輔「重ねトマト缶」
VOCALOIDシーンのみならず、インターネット/二次元カルチャーを中心とした多岐にわたるフィールドで、今まさに八面六臂の活躍を見せている原口沙輔。特に直近数カ月は彼の関わった作品が次々とドロップされているが、その中で音声合成ソフトを使用した新作がこの「重ねトマト缶」だ。
軽快なテクノビートが終始心地よいサウンドもさることながら、シーンでも注目され続けている重音テトと、ポップアートの旗手として消費社会を皮肉に描いたアンディ・ウォーホルという2つの人物を主題に、非常にアイロニックにかけ合わせたMVも一見の価値あり。彼のクリエイターとしての根源をも感じさせる、先鋭的なナンバーとなっている。
サツキ「ファサード・クエスチョン」
2023年発足のプロジェクト『ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE High↑』の最新曲となる本作。今回の提供曲「ファサード・クエスチョン」を手掛けたのが昨年“2024年の顔”とも呼ぶべきボカロP・サツキである。
自身の曲の大きな魅力でもあるカオティックな電子音の中に聞き馴染みのあるゲーム『ポケットモンスター』シリーズ内のBGMを紛れ込ませつつ、彼が今作で主題としたのは“偽物”。初音ミクと、その“偽物”としてとらえられることもままある重音テトとの共演が『ポケミク』で実現したことは、重音テトの誕生日であるエイプリルフールの特別編の企画としてこれ以上ない程に相応しい事象であると言えるだろう。