syudou、Chinozo、雄之助ら気鋭ボカロPも続々制作 花譜から生まれた音声合成ソフトウェア“音楽的同位体 可不”の魅力
花となれ / 雄之助 feat. 可不
ボカロとクラブミュージックの最先端を融合させた曲を発表している雄之助による「花となれ」は、フューチャーベースやトラップといった近年のビートも通過したうえでのモダンなエレクトロハウス。細切れにエディットしたトラックと、デジタル感を強調した歌声がマッチし、「花譜のため」ではない、「可不のため」の楽曲になっている。『KAF+YOU KAFU COMPILATION ALBUM』に収録。EDM/エレクトロ方面の可不楽曲の代表例のひとつ。
きゅうくらりん / いよわ feat.可不
昨年「IMAWANOKIWA」で初のVOCALOID殿堂入りを達成した気鋭のボカロP・いよわによる楽曲。普段は声やトラックを奇抜に編集している曲も多いものの、この曲は天然のゆらぎを持つ可不≒花譜の声を活かすような雰囲気だ。そのうえで、コロコロと忙しない音や不協和音、浮遊感のあるシンセ、逆再生風のエフェクトなど実験的な音が詰め込まれている。そうした要素が〈わたし/ちゅうぶらりん〉という歌詞の語感に繋がっていくラストも印象的。
いなくなりたくなる夜だ / 可不(烏屋茶房)
篠崎あやととのタッグによるアニメ『ダンベル何キロ持てる?』のオープニング曲「お願いマッスル」や「O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!」「Brand new!」といった『デレステ』楽曲など様々なアニメ/ゲーム曲を手掛けている烏屋茶房によるオリジナル曲。今回挙げた楽曲の中では最も「花譜」の歌声に近い質感が残されていて、ドロップを楽曲全体のピークに据えつつも、どこか哀しみを含んだ歌声が印象的な、都会の夜を連想させるメロウなポップチューンに仕上げている。
他にもみきとP、ナユタン星人、かいりきベア、40mP、すりぃといった錚々たる面々が可不の楽曲を発表しており、「カンザキイオリ×花譜」の化学反応とはまた違った、「様々なクリエイター×可不」の音楽が次々に生まれている。花譜が可不の楽曲を歌うこともあり、音楽的同位体として異なる魅力を持った両者が重なる瞬間が生まれているのも印象的だ。
現在のバーチャルタレント/アーティスト文化は、黎明期を経て認知を拡大し、徐々にバーチャル文化圏の外でも様々なアーティストやタレント、クリエイター、ユーザーとの接点を築きはじめている。「音楽的同位体 可不(KAFU)」もまた、花譜による音楽のパラレルワールドとして新たな魅力や可能性を見せてくれるだけでなく、あらゆる場所から気鋭のクリエイターたちが集まる実験の舞台として、次元を超えた人々の出会いを生んでいきそうだ。