Mrs. GREEN APPLE、Ado、aiko、女王蜂、[Alexandros]、IMP.……注目新譜6作をレビュー
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はMrs. GREEN APPLE「クスシキ」、Ado「ロックスター」、aiko「カプセル」、女王蜂「強火」、[Alexandros]「超える」、IMP.「Cheek to Cheek」の6作品をピックアップした。(編集部)
Mrs. GREEN APPLE「クスシキ」
デビュー10周年のアニバーサリーを迎えたMrs. GREEN APPLEの2025年第2弾シングル曲「クスシキ」(アニメ『薬屋のひとりごと』第2期第2クールオープニングテーマ/日本テレビ系)は、バンド本来の個性と新たな音楽的表現がせめぎ合う刺激的なポップチューンだ。まず印象的なのはベース、ギター、ドラム、鍵盤がギリギリのバランスで共存するアレンジメント。それぞれの楽器が高難度のフレーズを繰り出し、共鳴するアンサンブルは「何かがズレた瞬間に崩壊するのでは?」というスリリングさを感じさせながら、クルクルと変化する構成とともにリスナーを圧倒的な快楽へと誘ってくれる。さらにアニメの世界観と重なる中国的な楽器を取り入れることで、斬新な音楽世界を生み出していることにも注目してほしい。摩訶不思議な世界のなかで、〈貴方をまた想う/来世も〉と願いを捧げる歌詞もこの曲の大きな聴きどころだろう。(森)
Ado「ロックスター」
40曲を収録した『Adoのベストアドバム』における新曲のひとつ。作詞作曲はボカロPのjon-YAKITORYで、どっしりしたリズムの上でエレキギターがギンギンと鳴り響く、恐ろしく古典的なハードロックナンバーである。Adoのタフな喉や強気な巻き舌はこのような曲におあつらえ向き。今が何年だとか、時代的なコンセンサスというものをあえて無視し、作り手も歌い手も“架空のロックスター像”を楽しんで作り上げた印象だ。後半にはアコギが出てくる箇所があるが、その部分の歌詞は〈今夜アタシはロックスター/輝く時は永遠じゃないの/蝶が飛び立つ間は/歌ってたいだけよ〉である。等身大のリアルに囚われぬ演者の言葉として、これ以上ないパンチライン。(石井)
aiko「カプセル」
「シネマ」と両A面になる46枚目のシングル。TVアニメ『アポカリプスホテル』(日本テレビほか)に書き下ろしたエンディング主題歌で、オープニング主題歌も昨年のアルバム『残心残暑』収録曲「skirt」となっている。始まりも終わりもaikoの色で染まるアニメは、人類がいなくなった地球に残されたホテルで、従業員ロボットがいつか来るお客様を待ち侘びる――という物語。曲はいわゆるミドルテンポのラブソング、気を衒ったところは何もないのだが、〈あなた〉との日々を思いながら、待ち続けた時間の長さに途方に暮れる、〈心というものが産まれた〉主人公の心象描写が凄まじい。極めつけは最後の〈逢いたくて/死にそう〉。本気でキュン死にしそう。(石井)