ゆくえしれずつれづれ、激情を震わせ駆け抜けたラストステージ 想いをすべて楽曲に込めて放ったエモーショナルな一夜に
昨年11月29日に解散を発表したゆくえしれずつれづれのラストライブ『ゆくえしれずつれづれ ONEMAN LIVE~The Scream~』が、2021年1月2日、渋谷クラブクアトロで開催された。フロアに椅子を設置し観客数が制限されたり、マスク着用でコールやシンガロングが禁止になったりと、新型コロナウイルス感染症対策のためにかつてのようなメンバーに肉薄するライブというものができない状況の現在だが、4人は最後までゆくえしれずつれづれを全うし、激情を迸らせるステージで魅せた。
ドラム、ベース、ギターを率いたバンドセットでのステージとなったこの日。「九落叫」でスタートし、激しいシャウトでフロアに満ちる緊張感と静寂を破ると、続けざまにブラストビートと儚いボーカルとのアンビバレンスで感情を揺さぶる「MISS SINS」で、フロアの熱を高めていく。「白と黒と嘘」では、たかりたからが真っ先にステージ最前線に飛び出して観客を鼓舞し、会場一体となってコブシを振り上げるなど序盤からアグレッシブな曲を連投。その締めくくりが「Ideology」だ。孤独感とそれが生み出すパラノイア的な苦しみや焦燥を、繊細なメロディラインやシャウト、ポエティックな語りというスタイルで歌い、エモーショナルなボーカルと身体表現で形にしたこの曲は、初期の代表的な曲であり、ゆくえしれずつれづれの世界観や音楽的な奥深さの礎となっている。曲の終わりでステージに崩れ落ちるように歌う4人の姿に、会場のテンションもグッと上がっていくのが肌で感じられる。
簡単な自己紹介の後、ここからはほぼノンストップで駆け抜けるステージになった。ボルテージの高い「行方不知ズ徒然」から、メイユイメイが「もっと来いや!」と声を上げて観客の腕を突き上げさせる「ニーチェとの戯曲」、そしてBPMを上げて「我我」でジャンプを巻き起こす。椅子があり、フロアでの遊び方にも制限があるためにモッシュや、これまでのような盛り上がりはできないが、観客はそのエネルギーをコブシに込める。その光景に个喆は笑顔を見せて、自身のコブシを突き上げる。爆走一方でなく、メロウな「新宿シネマコネクション」から、東欧風のギターフレーズと2ビート、スカも混じり合ったでエキゾチックなパンクチューン「REDERA」へという緩急のある展開もいい。静の曲でも動の曲でも、“舞う”という表現がぴったりとくるしなやかに躍動するダンス、振付で空気を彩っていくまれ・A・小町の存在感が光る。
中盤はゆくえしれずつれづれの曲の中でもとりわけ“過多”な曲が並ぶ。硬質なロックからトロピカルな地へとワープするプログレッシブなサウンドで暴れ回る「the End of…」から、ラウドなバンドサウンドに4人のシャウトで体当たりしていく「Ways to Die」、また“だつりょく系げきじょう系”というグループのキャッチがそのまま曲になったようなポップでアバンギャルドな「つれづれ賛歌」で観客の感情を振り回す。「Phantom Kiss」から「Paradise Lost」へという美しくも壮絶なハードコアチューンの並びもカタルシスたっぷりだ。