ゆくえしれずつれづれ、激情を震わせ駆け抜けたラストステージ 想いをすべて楽曲に込めて放ったエモーショナルな一夜に
後半にかけては2020年にリリースした3rdアルバム『paradox soar』からの曲を中心に、問いかけ呼びかけていくような力強さがクレッシェンドする。「Wish/」や「howling hollow」「Grotesque promise and I really hate me」など、メンバーそれぞれが観客ひとりひとりに歌をまっすぐ手渡すように歌い、フロアとの距離を密接にしていく。シャウトや4人の声色を、短いフレーズやセリフを掛け合わせてコラージュし、様々な矛盾する感情を内包した世界を表現するのもひとつの面白さだが、このブロックを見て感じたのは『paradox soar』のようなストレートな表現でリスナーと手を繋いでいった、ゆくえしれずつれづれのこの先をもっと見てみたかったということだ。グループの誕生からゆくえしれずつれづれの心を体現する存在となっているまれ・A・小町、2018年に加入しパワフルな表現と明るいキャラクターでグループを動かしていったメイユイメイ、そして同年末にレーベルメイトの幽世テロルArchitect(現KAQRIYOTERROR)からずっとファンだったと語るゆくえしれずつれづれに移籍した个喆、新世代という言葉がぴったりな破天荒な勢いを持ったたかりたから。5年の活動の中でもメンバー交代が幾度かあったが、そのたびに何か大きく指針が変わるというよりは、着実で丁寧な歩みでゆくえしれずつれづれの精神やその成長を育んできた経緯がある。ハードコア~エモ的で攻撃的なサウンドの中で、たゆたうように歌い叫んでいた初期の佇まいから、徐々に主体的に胸の内をさらすように声を上げて、歩み出す力強さを得ていった。歌の世界観や、その表現に共振してくれる群青と呼ばれるファンの存在も大きかっただろう。自身と向き合っていく強靭さを手に入れた今だからこそ、これからのへの一歩や戦い方を見たかった。そんな想いが強い。
終盤は「Loud Asymmetry」「ポストカタストロフ」と渾身のシャウトを込めた曲を連投し、最後に持ってきた曲は〈さよならまた会う日まで「じゃあね」〉〈生きていて「君は君でわたし」〉と歌う「Doppelgänger」だった。観客の高揚感を照らすように、ステージからの眩しいほどのライトがフロアも包み込む。4人の表情が柔らかなことも印象的だ。
この日、2度のアンコールに応えたゆくえしれずつれづれ。そのアンコールの最初には、このライブ直前に限定公開されたゆくえしれずつれづれ最後の曲「Requiem」が披露された。かつてないパワーを放つ4人のシャウトで構成されたヘヴィな葬送曲であり、ゆくえしれずつれづれと群青にとってのはなむけの歌だ。本編でもアンコールでも、MCや別れの言葉などが直接語られることはなかった。4人はその想いをすべての曲に封じ込めて、全力で歌い、叫び、ステージを後にした。感動的な言葉で飾り立てることなく、美しい曲を、美しい曲のままで観客の心に刻み込んでいったラストライブは、とてもゆくえしれずつれづれらしいと思えた。
■セットリスト
『ゆくえしれずつれづれワンマンLIVE~The Scream~』
2021年1月2日(土)渋谷CLUB QUATTRO
01. 九落叫
02. MISS SINS
03. 白と黒と嘘
04. Ideology
05. 行方不知ズ徒然
06. ニーチェとの戯曲
07. 我我
08. 新宿シネマコネクション
09. REDERA
10. the End of…
11. Ways to Die
12. つれづれ賛歌
13. Phantom Kiss
14. Paradise Lost
15. Wish/
16. howling hollow
17. Grotesque promise and I really hate me
18. Loud Asymmrtry
19. ポストカタストロフ
20. Doppelgänger
<アンコール>
21. Requiem
22. 群青
23. 逝キ死ニ概論
24. 春夏秋闘
25. 鏡想唱弍鳴り
26. 凶葬詩壱鳴り