ぜんぶ君のせいだ。、不安をひっくり返した全身全霊のパフォーマンス 新体制お披露目となった47都道府県ツアー初日をレポート
ぜんぶ君のせいだ。(以下、ぜん君。)の47都道府県ツアー『re:voke tour for 47』初日が、11月3日にZepp DiverCity TOKYOで開催された。このツアーは新メンバー3名(甘福氐 喑、雫ふふ、もとちか襲)が加入した新体制のお披露目ステージであり、結成当初からの目標である武道館公演に向けてリスタートを切るライブだ。
7月24日に中野サンプラザで『生鳴兆候』と題した有観客ライブを行ったぜん君。は、その直後に一時活動休止を発表した。そして、この活動休止中に3人のメンバーが脱退した。5年にわたる活動の間には何度か脱退・新加入があって、グループは形を変えてきたが、今回は活動創世期からのメンバー(ましろ、一十三 四)の脱退があり、結成時からのメンバーは如月愛海のみとなった。彼女たちが走ってきた過程を追いかけてきたファンにとっては、今回の変化は驚きや動揺があったと思うし、筆者もこの1〜2年は特に彼女たちのライブの強さを感じていて、この先への期待も高かったゆえに、ぜん君。はこれからどうなっていくのだろうという思いが募っていた。このツアーは、そうしたファンの不安をひっくり返していくパワーが必要となりそうだ。
バンドセットとなったこの日のライブ。まずはドラム、ベース、ギターが登場し、息を飲むように会場の緊張感がグッと高まったところでステージに如月愛海、征之丞十五時、甘福氐 喑、雫ふふ、もとちか襲が初めて揃った。1曲目は新体制第1弾となる新曲「インソムニア」。これまでのぜん君。を踏襲したメランコリックな雰囲気が漂うエモーショナルな曲だが、そのメロディを紡いでいく5人のボーカルはより淡く繊細だ。そして「Cult Scream」「常花」「ロマンスセクト」と勢いのあるライブチューンを連投し、拳を築き上げてフロアを煽る。大きくアップダウンするメロディラインとシャウトも入った、カオティックな「ロマンスセクト」は観客のタガを外していく。序盤はまだまだ、如月愛海がメンバーを牽引していくようなバランスにも見えた。
“病みかわいいで世界征服”がキャッチコピーとなったぜん君。の曲は、素っ頓狂でかわいらしいポップスから激情を吐き出すラウドな曲まで多種多様な上に、1曲の中でも情緒が目まぐるしく変化するため、聴き手を翻弄し惹きつける。中盤はその情緒不安定なぜん君。のキャラクターを全開にしていく曲が並び、初期のハイパーなポップチューン「僕喰賜君ノ全ヲ」や、切なくメロウな「世界にたった一人ちっぽけな君を」では、如月愛海と征之丞十五時が中心になって5人でのハーモニーを重ねていく。切ない曲はより切なく、丁寧に捉え直している感覚で、「WORLD END CRISIS」のようなシャウトパートが多く盛り込まれた曲は儚さとアグレッシブさのコントラストが強い。また、感情をフルスロットルで吐き出すシャウトパートでの効果もあるのか、新メンバーの表情も序盤の緊張とはまた違って引き締まったものになっている。