Korn、Tool、Baroness、Opeth……独自のスタンスで“ヘヴィ”を表現するHR/HM新譜6選

 この夏以降、良作揃いのハードロック/ヘヴィメタル(以下、HR/HM)シーンおよびエクストリームミュージック界隈。今回紹介する6作品もバンドの知名度の差こそあれど、それぞれ2019年を代表する力作ばかりです。

Korn『The Nothing』

 まず最初に紹介するのは、90年代以降のヘヴィ/ラウドシーンを牽引し続けてきたKorn通算13作目のオリジナルアルバム『The Nothing』です。昨年はフロントマンのジョナサン・デイヴィス(Vo)が初のソロアルバム『Black Labyrinth』を発表し、独自性の高いサウンドが話題となりましたが、3年ぶりにリリースされた本家Kornのアルバムでは“これぞKorn”といえるヘヴィサウンドが展開されています。興味深いのは、それまでのヒップホップをベースにした“跳ねる”リズムが一部の楽曲ではファンクやソウル、ブルースといったルーツミュージックからの直接的影響が表出している点でしょうか。こういったテイストが、本作の放つダークさをよりディープなものへと昇華させているようにも感じられます。

 と同時に、そのダークさやダウナー感はここ数作のそれとは若干質が異なるようにも映ります。実はこのアルバムが完成に至るまでの間に、ジョナサンの妻が急逝しています。そういった出来事がこの作品の影を落としたことは間違いない事実であり、特に冒頭のイントロダクション「The End Begins」の終盤に挿入されるジョナサンの嗚咽からは、ここから先に何が表現されていくのかが理解できるはずです。Kornの本領発揮と言わんばかりのスタイルですが、初期作ほど混沌としていないことから非常に聴きやすい。新たなトライも含みつつ、ここ10年の彼らの作品における集大成的な1枚に仕上がっているのはさすがの一言です。来年3月にはSlipknot主催による大型フェス『KNOTFEST JAPAN 2020』での来日も決定しているので、これらの楽曲を生で楽しめる絶好の機会となりそうです。

Korn – You’ll Never Find Me (Official Live Video)
Tool『Fear Inoculum』

 2作目は、今年8月末に発表されたToolのニューアルバム『Fear Inoculum』です。前作『10,000 Days』(2006年)から約13年4カ月ぶりという、Toolにとって最長スパンを経て届けられた本作は、大半の楽曲が10分を超えるという異色の内容にも関わらず全米1位を獲得。ちょうど今年8月初頭にはToolの過去作品がデジタル配信解禁されたこともあり、今作もストリーミングサービスでの再生数はかなりのものであるとのこと。同作からは10分20秒という長尺のリード曲「Fear Inoculum」がアメリカ・Billboard Hot 100(シングルチャート)で最高93位まで上昇し、「トップ100入りを果たした史上最長の楽曲」という記録を樹立しています。

 本作はCDバージョンが7曲入り約80分、デジタルバージョンが全10曲入り約87分という大作で、先に書いたように大半の楽曲が10分超えの長尺ナンバーばかり。しかし、1曲1曲が長いからといっても、とっつきにくさはそこまでない。むしろ、宗教色が若干強く感じられた『10,000 Days』よりも聴きやすい印象を受けます。メイナード・ジェームス・キーナン(Vo)のボーカルパートも決して多いとはいえませんが、各曲で印象的なリフやフレーズが反復され続けるアレンジからはプログレッシヴロックを通り越し、ある種のダンスミュージック的高揚感すら味わうことができます。また、その反復されるフレーズの上に乗るアダム・ジョーンズ(Gt)のギターソロから伝わるエモーショナルさは、実は本作を語るうえでもっとも“人間的”な要素なのかもしれません。

TOOL – 7empest (Audio)
Baroness『Gold & Grey』

 3枚目はBaroness通算5作目のアルバムにして日本デビュー作となる『Gold & Grey』です。本作はすでに今年6月に海外で発売済みですが、このたび10月2日に待望の日本盤が発売。毎回“色”をテーマにしたタイトルを冠したアルバムを制作し、その独創的な音楽スタイルとビジュアルイメージが評価され、前作『Purple』(2016年)収録曲の「Shock Me」は2017年のグラミー賞ベストメタルパフォーマンスにノミネートされるなど、本国アメリカでは高い支持を獲得しているものの、ここ日本ではまさに“これから”という言葉がふさわしい存在です。

 新メンバーに紅一点のジーナ・グリーソン(Gt)を迎えて制作された今作は、Mercury Revの元メンバーでもあり、MogwaiやThe Flaming Lips、あるいは日本のNUMBER GIRLやZAZEN BOYS、MASS OF THE FERMENTING DREGS、ART-SCHOOLなどを手がけてきた音楽プロデューサー、デイヴ・フリッドマンがプロデュースを担当。ヘヴィさが際立った前作『Purple』から一転、オルタナティヴロック色が増した異色ハードロック作品に仕上がっています。曲によってはストーナーロックやサイケデリックロックからの影響も見え隠れしますが、そのへんはデイヴ・フリッドマンからの影響も多少あるのかなと。ただ、生々しくてトゲトゲしていて、色彩豊かなサウンドメイキングはいかにもこのバンドならではのもので、前作までの方向性をより研ぎ澄ました到達点がここなのかなという印象も受けます。聴きやすさという点においては過去イチですので、HR/HMやヘヴィロックなどに偏見を持っているリスナーにこそ聴いてもらいたい、個人的2019年ベストアルバム候補の1枚です。

BARONESS – Tourniquet [Official Music Video]

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