『日本一の最低男』“太陽”がつなぐ“家族”の思い 巧みな構造の蛭田直美脚本に唸る
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すっかり子育てのコツを掴み、ひまり(増田梨沙)も多少は打ち解けるようになり、家族での暮らしの楽しさをわかってきた一平(香取慎吾)。そんななか真壁(安田顕)から、家族だけでなく地域の子どもたちを大切にしていることをアピールするための“飾り”が必要だと言われる。都(冨永愛)の店で外食をした帰り道で、正助(志尊淳)から以前「こども食堂」に助けられたという話を聞き、一平は都を巻き込んで「こども食堂」を立ち上げ、テレビで特集を組むことを計画するのである。
1月30日に放送された『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)の第4話は、いつも通り一平の選挙に向けたアピール工作をフックにしながらも、第2話での地域の有力者や第3話でのPTAの保護者の心をつかむといったような、具体的なアクションまではたどり着かない。その代わり、前回に引き続き難しい年頃であるひまりが抱える悩みに触れ、亡き陽菜(向里祐香)に思いを馳せ、そして都という大森家の家族にとって重要なキャラクターの人物造形を強化していくことに重点が置かれていく。
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そういった意味では“家族を描く”という基本的な姿勢は維持しつつも、これまでのエピソードとは多少毛色が異なって見える。と思っていたら、やはり今回の脚本は(前回までの政池洋佑からバトンタッチして)蛭田直美が担当していたことがエンドクレジットで確認できる。なるほど、通りで隅々まで行き届いた優れた脚本だったわけだ。
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一平に起こされた朝陽(千葉惣二朗)が「なんでもう朝なの?」と訊ねる冒頭、一平は「太陽に言え」と答え、「太陽いなくなれ」と駄々をこねる朝陽に「いなくなったら氷河期だぞ」と返す。このユニークなやり取りで見られる“太陽”というキーワードが、終盤にまったく別のかたちとして、都とひまりが陽菜について語る会話の場面で反復する。写真のなかの陽菜の笑顔を“太陽のよう”と形容する都に、「ずっと夜だよね。太陽がなくなったら、ずっと冬だよね」とひまりは悲しげな表情を見せるのだ。