佐々木李子×松本拓輝Pが明かすAve Mujicaの舞台裏 「妥協をまったくしないところが嬉しい」

3月27日に最終回を迎えたTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』。本作のCGアニメーションとキャストの生演奏によるライブパフォーマンスは、いまなおアニメシーンに圧倒的クオリティを見せつけつづけている。
アニメ放送を経て、Ave MujicaのGt.&Vo.にしてフロントマンの佐々木李子、バンドプロデューサーの松本拓輝は何を思うのか。レコーディングの裏話やOPテーマ「KiLLKiSS」のデモ音源秘話、「わかれ道の、その先へ」と続いていくリアルライブ……。Ave Mujicaのマスカレード、その「舞台裏」のすべてが明かされる。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
朗読劇に仕込まれていた、TVアニメ『Ave Mujica』の伏線

——改めて、Ave Mujicaがこれまでどういうコンセプトで活動してきたのかお聞きしたいと思います。
松本拓輝(以下、松本):Ave Mujicaの音楽的なコンセプトは、ゴシックの精神性やメタルミュージックが大前提にあるんですが、実は「縛られすぎずにいろいろと自由にやる」というところがあります。ジャンルに縛られると、「こうでなければいけない」と可能性を狭めることにも繋がるので、自由奔放に、縛りすぎないように意識して作っています。
佐々木李子(以下、佐々木):私は「ムジカノート」というメモをいつも持ち歩いているんですが、ここに一番最初のコンセプト資料があって……「不可思議で蠱惑的なサスペンスショー」とメモっていました。シアトリカルな部分があったり、TVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』にもサスペンスやホラーの刺激的な要素もあったりするので、本当に新しいジャンルを切り開いたバンドだなと思いました。
松本:ジャンルとして何かというよりは、バンド・楽曲としてのストーリーを重視しています。ひとつひとつの楽曲の中にしっかりストーリーがある。サウンドプロデューサーとして作詞の面においてもDiggy-MO’さんが緻密にストーリーラインを考えてくださるので、それに応じて「音楽的にはこういう表現をしよう」とか、そういうことを一曲一曲考えています。「コンセプチュアルに楽曲を作っていく」ということ自体がコンセプトかもしれないですね。
——ライブではどのようにその世界観を表現していたのでしょうか?
佐々木:私は幕間の朗読のセリフから、実際に自分でもいろいろ考察をしていました。セリフもあえて抽象的になっていますし、特に私が演じたドロリスはなかなか内面が見えてこなかったキャラクターですし。想像を搔き立てられて、聞き手に解釈が委ねられるところがAve Mujicaのおもしろさなので、私も想像力を働かせて「もしかしたらこれはオブリビオニスに対して言ってるのかも」とか「初華の生い立ちの全てのことを言ってるのかも」とか、ひとつひとつの言葉を私も読み解くようにしてライブを作ってきました。

松本:アニメで描かれるであろう謎を、ライブの中にたくさん散りばめていました。アニメを最終回まで観てから過去のライブを観返していただくと、いろいろと発見があると思います。3rd LIVE『Veritas』ではドロリスが「ありがとう、本当の僕を見てくれて」と言っていたり。
佐々木:あー!
松本:たぶんライブで初めて聴いていたら「どうした急に、なんだなんだ」「なんか様子がおかしいぞ」と、フックになるワードだったと思うんですが、アニメを観ると「なるほどね」と。
佐々木:たしかに。「見つけてくれた人」がいたんですもんね。

松本:アニメを観ないとわからないこともかなり意識して伏線を張りながらライブを構成していました。あえて抽象的にしか言わないとか、突拍子もないことをパッと言うとか、そういうふうに、考えさせるような中身にしていました。1st~3rd LIVEまでの幕間の脚本は、アニメの脚本をご担当されている小川ひとみさんにお願いしていて、おかげさまでアニメとライブの一貫したストーリーや、細かい伏線の描写が実現できています。
——ファンの間でも朗読劇のセリフを文字起こししたりして、考察が盛り上がっていました。あれをライブ中に聴き取って暗記できる人はすごいなと思っていましたが。
松本:集中してよく聴いてくださっているなと(笑)。
佐々木:そうですよね(笑)。

——朗読劇をしようと思った経緯は?
松本:少しメタ的な事情ですが、アニメの作中の演劇をそのままやろうとすると、どうしても転換の問題などが発生して難しくて。そうではない方法でキャラクター性を表現するためにああいった形になりました。ただ、朗読とひとことで言っても実はすべてのライブでやり方を変えていて。たとえば1st LIVEは事前の録音に対して本番中はプレスコで身振り手振りを加えていて、2nd LIVEでは完全に録音と映像のみ。3rd LIVEではコンテンポラリーダンサーが出てくるという、特殊な演出をしました。そして4th LIVEでは本人たちに現場で喋らせる。といった具合に、実は毎回演出を変えています。いろいろ意図はあるんですが、個人的な思いだけを明かすと「同じことをやりたくない」という気持ちで変化を加えながら表現していました。
佐々木:いつもすごくこだわって作ってくださりますし、逆にこちらが盛りすぎていると松本さんは「それ、逆にないほうがいいかも」という引き算の部分も指摘してくださるのでありがたいです。私はもともとミュージカルをやっていたから朗読の時間も大好きで、他にはないようなものを出せているのかなと思います。
松本:演劇的な要素もありますし、僕はAve Mujicaのライブは単純な音楽ライブではなくて、メディアミックスの展開も含めて総合芸術だと思っています。
“意見を言い合える”チームだからこそ生まれるAve Mujicaのライブ演出

——メディアミックス的な演出で言うと、4th LIVEで「KiLLKiSS」が初披露されたとき、メンバーの仮面が外されたのは衝撃的でした。
松本:実は仮面を外すのは、4月のMyGO!!!!!×Ave Mujica 合同ライブ「わかれ道の、その先へ」まで取っておこうと思っていたんです。
佐々木:そう言っていましたよね。
松本:「KiLLKiSS」自体は4th LIVEでやるつもりだったんですが、ライブの制作が進むなかでアニメの第1話をライブ中に先行上映しようという話が出てきて。「じゃあ、#1で仮面取ってるし、本人たちの仮面も取っちゃうか」と思ったのが実際の経緯なんです。とにかく「KiLLKiSS」のプロモーションのピークを2024年12月15日からの数日間に作ろうという意図があって。オープニング映像も先行して出す予定はなかったんですが、「このライブの直後に絶対出したほうがいい!」と考え公開しました。さらにそこに仮面を取るという演出を加え、「KiLLKiSS」のお祭を作ろうと。先行上映という偶然が重なった結果の産物ではあるんですが、今までずっと慎重に顔を隠してやってきたバンドだからこそ、「最高の舞台・最高のタイミング」はここしかないだろうということで決まりました。ちなみにこれは裏話で、プリイントロで紗幕が上がってからバンドインまで、演者が後ろを向いていたと思うんですが、あれは前日か当日のリハ中の思いつきです。
佐々木:たしかに結構直前だったような……。
松本:前日だったかな。「後ろ向いてたほうがかっこよくないですか?」みたいな話になって(笑)。こういう臨機応変な演出がAve Mujicaでは多いんですよね。それこそ4th LIVEの「Symbol II : Air」では本番15分前とかになって「ここでちょっと動きをつけたいんですけど」とメンバーに言われて。「15分前だよ!?」と大慌てで舞台監督のところまで走って「すみません! ちょっとここの動き、変えたくて!」と伝えにいって……。
佐々木:大変ですよね。照明とかも決まっているのに……(笑)。
松本:ちゃんと演出を変更しないと誰もいないところに照明が当たってしまったりするので。

佐々木:本当は事前に演出を決めてやったほうが安全ではあるんですが、楽屋で確か茜(米澤茜)が、「めいしゃん(岡田夢以)とゆづむん(渡瀬結月)で前に出たほうがよくない?」という話になって。とにかく身体を動かしたくなる、ジャジーな雰囲気の曲なので、普段いない場所にもみんなで行っちゃおうと。そういう衝動的な気持ちも、ギリギリまで大切にしながらやっています。作り込んでもいますし、瞬間瞬間で心のままに動くというのも大切にしているからこそ生まれたアイデアかもしれません。
松本:たぶんメモが残っていて……あった。「2Aからギターソロ頭まで渡瀬・岡田、マスカレードと同じ場所。2Bからギソロ前まで佐々木が高尾に寄りたい」って書いてある。
佐々木:そうだ。
松本:キャストもスタッフも、「思いつき」と言うと若干言葉が悪いですが、その場で生まれたアイデアを活かそうとしてくれています。やっぱりみんないいものを作ろうと思ってくれているのがすごく嬉しくて、しっかり「チーム」ができているなと感じます。
佐々木:プロデューサーとメンバー間でのコミュニケーションも多いんですよね。メンバーももちろんですが、プロデューサーといろいろ話し合いをする時間も、いま思い返したら結構あったなと思います。ライブの後もですし、練習前に「次のライブについてみんなで意見言い合おう」とか、そういう場を作ってくださって。いろいろなアイデアがどんどん出てくるのは、その空気をいつも作ってくださるからだなと思います。
松本:環境を作るのはすごく大事だと思っています。
佐々木:超大事。あと松本さんはもともとメタルバンドのドラマーなのも強みだなと思います。『BanG Dream!』としてはなかなかなかった形のメタルバンドなので、メタラーとして「もっとこうしたほうがいいかも」と思える部分、たとえばヘドバンのかっこいい魅せ方なども教わりました。休憩中にはドラムセットのところに行ってちょっと演奏したりしているのも、実は私たち見ていて。
松本:それ、スタッフはあんまやっちゃいけない(笑)。
佐々木:(笑)。
松本:仕事をするうえでは、みんなが同じ方向を向いて同じ方向に走っていくのが大事です。誰か一人でも、違う方向を向いている人がいたらダメなんです。そういう人が出ないようにするのも僕の仕事だと思っているので、そういった環境づくりを心がけています。
佐々木:ときにはちょっとぶつかり合うときもありますよね。
松本:(笑)。でも必要な時間だと思いますし、それほど真剣になれるバンドなんてなかなかないと思います。

佐々木:やっぱりみんないいものを作りたいと思っているからこそいろいろな意見が出ますし、そこを乗り越えて強くなってるなとも思います。やっぱりみんな本気で、本当に人生を賭けているので。本当にアニメの雰囲気と同じような感じです。
松本:これ、以前面と向かって言われたことがあるんです。練習後に佐々木さんから「松本さんに人生賭けてるんで!」って急にバッと言われたことがあって。
佐々木:私も珍しく……「いま言うしかない!」という気持ちで「人生賭けてるんで、お願いします!」みたいなことを言ったときもありましたね。
松本:そう言われて、もちろんそれまでも手を抜いていたわけではありませんが、「あ、人の人生を預かってるんだな」と改めて実感して、より頑張るようになりました。
佐々木:嬉しい(笑)。

松本:こういうコミュニケーションからいいアイデアが生まれることばかりです。ちょっと毛色が違いますが、たとえば3rd LIVEのオブリビオニス(CAST:高尾奏音)のピアノソロもそう。リハの合間に彼女はよくピアノを弾いているので、それを聴いて「良いじゃん! それやろうよ!」となり採用しました。これもメンバーとのコミュニケーションが取れているからこそ生まれたものですね。
佐々木:Ave Mujicaのチームにはふとしたフレーズをしっかり拾ってくれるスタッフさんが多いので、そういうところからもパフォーマンスがどんどん広がっていきます。私もいま思い出したもので言うと、「MEGA VEGAS 2024」に出演させていただいたとき、一番最後の曲が少し不完全燃焼だったので、最後のかき回しのときに思いがあふれてしまって「うわー!」って叫んじゃったんです。「きっとあとで怒られるかな」と思ったんですが、でも「逆に限界突破してメタルバンドのボーカルとしての気持ち、魂の叫びを見せてくれてめっちゃ良かった」と松本さん含めスタッフさんが言ってくださりました。「いろいろ挑戦していいんだ!」と思えたので、いろいろなことを自由に、いろいろな発想でやらせてくださることもありがたいなと感じます。
——渡瀬さんも、そのときの佐々木さんがすごくかっこよかったとインタビューでおっしゃっていましたし、インタビュー記事を読んだファンの方も「これはもしかして『MEGA VEGAS 2024』のときのことでは?」と反応されていました。しっかりパフォーマンスが伝わっているということだと思います。
佐々木:ありがたいです。
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佐々木:(笑)。みんなイヤモニで音を聴いているから耳は大丈夫かなと思ったんですが、でもゆづむんもカッコよかったと言ってくれるし、一人一人がそういうことをパフォーマンスとして認めてくれるメンバーなので、本当にしっかりバンドをしている、より高みを目指していけるチームだなと思います。
——叫び声といえば、佐々木さんがスクリームまでできてしまったらメタルバンドとしてますます魅力的になると勝手に期待しています。
松本:……それについては今は何も言わないでおきます……。






















