中山美穂さんが刻んだ“生きた証” 『日本一の最低男』『家政夫のミタゾノ』での存在感

中山美穂さんが『日本一の最低男』に刻んだ証

 香取慎吾が主演を務める『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系/以下、『日本一の最低男』)は今期のドラマの中でもとくに注目度の高いドラマなのではないだろうか。人生の崖っぷちに立つ“日本一の最低男”・大森一平(香取慎吾)が、義弟の家族と生活をともにするうち、やがて社会を変えていこうと奮闘していくことになる新しいホームドラマだ。私たちが日常生活を送るうえで見過ごしてはならない切実な問題を掬い上げていて、これを体現する俳優たちの演技も見応えがある。2024年の12月6日にこの世を去った中山美穂さんも、そんな作品を支えるひとりだ。

中山美穂さん、香取慎吾主演『日本一の最低男』出演へ 第1話と第3話に保育園長役で登場

12月6日に逝去された中山美穂さんが、2025年1月9日よりフジテレビ系で放送がスタートする香取慎吾主演の木曜劇場『日本一の最低…

 この『日本一の最低男』で中山さんが演じているのは、一平の義弟である小原正助(志尊淳)が保育士として働く保育園の園長・園田美奈子である。正助は娘・ひまり(増田梨沙)と息子・朝陽(千葉惣二朗)を育てるシングルファーザーで、仕事と家事・育児の両立に限界を感じていたため、義兄を頼ることになった。そしてこれを“日本一の最低男”こと一平は利用するのだ。政治家として社会的に再起すべく、そのイメージアップのためにである。

 1月9日に放送された第1話での中山さんの登場はごくわずかだったが、そこには生前の彼女自身の元気な姿があり、園田美奈子というキャラクターとして本作の物語の展開やテーマ性に強度を与えるパフォーマンスを披露していたと思う。仕事を終えて早く自分の子どもたちの待つ家に帰りたい正助を、美奈子は何かと帰らせてくれないのだ。いささか記号的なキャラクターだが、正助と彼女の関係が丁寧に描かれる展開も用意されていたのではないのだろうかと推測する。しかしそれが叶うことはもうないのだから、誰もが悲しく悔しい思いをしていることと思う。

 ただそのいっぽうで、映画やドラマというのは、俳優の生きた証を刻むものなのだと改めて思った。たとえそれが物語世界の中のキャラクターとしてであれだ。1月14日に放送された『家政夫のミタゾノ』第7シーズン(テレビ朝日系)の第1話には、この回のゲストとして中山さんの姿があった。演じていたのは、厳しい義母との同居により自己を抑圧している田中令子という人物。そんな彼女が“スーパー家政夫”であるミタゾノさん(松岡昌宏)の存在によって、かつての青春を取り戻すかのごとく快活に振る舞う姿は爽快だった。ミタゾノさんは、関わる人間を変える。こちらでも中山さんは、物語の展開とテーマに強さを与えていた。それも、コミカルな演技で。

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