『おむすび』最終回のラストシーンに込められた思い 「一緒に生きていく」制作陣の願い

NHK連続テレビ小説『おむすび』が3月28日に最終回を迎えた。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。その締めくくりは令和7年1月17日。結が幼少期に阪神・淡路大震災の避難所で出会った三浦雅美を訪ねるシーンで幕を閉じた。
制作統括の真鍋斎は「この物語において、結の原点はやはり“避難所でおむすびを受け取った”ということですね。それをずっと気にしながら生きてきて、故に心を閉ざしていたところもありました。ですが、『そうではなくて、もう少し自分らしく生きてみよう』と思えるようになった女の子が、どういう行動を取るかと考えたときに、僕だったら『(雅美を)探せるものなら探してみよう』と思うのではないかなと」と、この展開の必然性を語る。

「結と雅美が未だにつながっていることを『できすぎだ』と考える方もいるかもしれませんが、僕は現実にあり得ることだと思うんです。実際、神戸の阪神・淡路大震災を取材していた僕らの仲間には、東京にいようが、別の場所にいようが、今でも神戸との繋がりを持ち続けて、1月17日には追悼行事に出席しているディレクターやプロデューサーもいます。結は神戸に出てきてから何年か雅美を探していて、連絡がついてからは毎年、1月17日に会いに行っている。そんなイメージであのシーンを作りました」(真鍋)
雅美役を演じるのは安藤千代子。制作統括の宇佐川隆史は「安藤さんは『自分自身をこの役に投げ込んだ』とおっしゃっていました。要するに、自分を投影した役であったということですよね。こういう役は、今までもこれからもないだろうから、今回も無理に役作りはせず、自分の思ったことをしっかりと感じて役を演じようと思います、と。その上で、『結ちゃんが来てくれたことは、雅美さんにとっては本当に嬉しいことでしょうね。なぜなら私が嬉しいからです』とお話しされていました」と安藤とのやり取りを明かす。
印象的だったのは雅美の「まだあったかいね」という言葉。幼い頃の結が「おばちゃん、これ冷たい。チンして」と話したことへのアンサーであるが、このシーンは雪が降る中、実際に温かいおむすびを手に撮影が行われたのだそう。
宇佐川は「現場近くで握ったおむすびを、料理監修の広里(貴子)先生が保温機で温めながらお持ちになって、直前にパッと出した、という流れでした。もちろん、演技で温かさを表現することもできますが、『あの2人に温かいものを食べさせたい』というスタッフの思いがありました」と振り返った。

また同シーンの構成について、真鍋は「実は、編集時には避難所の回想を入れていましたが、それはやめましょうと提案しました」とし、こう続ける。
「ドラマを作る上で、どこまで説明するかはいつも迷うところですが、僕自身、『余計な説明はなるべく少ないほうがいい』と思っているんです。最後に音楽を付けるかどうかも正直迷いましたが、そこは朝ドラだし付けるか、と。そのあたりも含め、本当に短いけれど、こだわりだったり、いろんな考え方だったりが詰まったシーンだと思っています」(真鍋)





















