香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎の表現者としての強み “最低男”の好演で進化する新しい地図

“最低男”の好演で進化する新しい地図

 華やかな“アイドル”というものは、私たちに笑顔を、社会に希望をもたらしてくれる存在だ。かつてアイドルだった香取慎吾もそのひとりである。

 国民的アイドルとして歌って踊り、俳優業で彼が生み出した人気キャラクターは何人も存在する。けれども所属していたSMAPが解散し、アイドル業から離れてからは、俳優業における香取にさまざまな変化が訪れているように思うのだが、いかがだろうか。彼が主演を務めるドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系/以下、『日本一の最低男』)もそのひとつである。

 “日本一の最低男”である主人公・大森一平が、家族を、社会を、そして日本を変えていくために奮闘する姿を描く完全オリジナル作品。

『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』©︎フジテレビ

 本作は、人生の崖っぷちに追い込まれた“日本一の最低男”・大森一平(香取慎吾)が、義弟の家族と生活をともにするうち、やがて社会を変えていこうと奮闘していくことになる新しいホームドラマだ。シングルファザーである義弟の小原正助(志尊淳)は、仕事と家事・育児の両立に限界を感じ、一平を頼ることに。だが、一平は“日本一の最低男”だ。不祥事を起こしてテレビ局を追われた彼は、政治家になって社会的に再起すべく、イメージアップのために小原一家を利用しようとしているのである。

 ところが実際にフタを開けてみると、一平は根の優しい性格の持ち主だということが分かってきた。が、困っている人や子ども相手にも基本的に打算的な人間なので、“最低男”といえばそうなのかもしれない。一平が何か企んでいるときの香取の表情と声の調子には、非常に魅せられるというもの。それは香取が一平という人間を、フィクショナルな世界を生きるキャラクター然としたものではなく、私たちのすぐ隣にいそうなほどの等身大の存在にしてみせているからだろう。

『犬も食わねどチャーリーは笑う』©2022“犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS

 “最低男”の役でいえば、映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』(2022年)のときの香取の演技に近いものがある。演じていたのは、一見すると感じの良い男性だが、その言動の一つひとつが何かと妻をイラ立たせる夫という役どころ。これもまたキャラクター然としたものではなく、「いるいる」「あるある」な人物像を立ち上げていた。だから妻と同じように、私たち観客の誰もが彼にイラついたものだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる