香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎の表現者としての強み “最低男”の好演で進化する新しい地図

“最低男”の好演で進化する新しい地図

 香取は旧知の仲である草彅剛、稲垣吾郎とともに立ち上げた「新しい地図」を現在の拠りどころとしている。そして、そんな3人が揃って出演した『クソ野郎と美しき世界』(2018年)という作品がある。タイトルのとおり、“クソ野郎”ばかりが登場するオムニバス映画で、「新しい地図」が製作したものだ。3人ともかつてはトップアイドルであり、その名を知らぬ者はいないほどの国民的アイドルだった。そんな彼らが先頭に立って作り上げた映画なのだから、何かを変えたかったのだという意志をここから読み取ることは簡単だろう。

『クソ野郎と美しき世界』©2018 ATARASHIICHIZU MOVIE

 草彅が『台風家族』(2019年)で金に汚いクズ男をリアリスティックに体現していたのをいまだに鮮明に思い出すことができるし、稲垣は『正欲』(2023年)で自分の思う“正しさ”を振りかざす男を自然体ながら力演していた。各作品の毛色は違えど、それぞれの物語の世界においては、いずれも“日本一の最低男”だったといえるのではないだろうか。そもそも稲垣の場合は2010年に、三池崇史監督の『十三人の刺客』で「極悪非道」などという言葉では形容することができない悪役を演じ、日本中を震撼させたものだ。あの頃のことはよく覚えている。当時の稲垣は現役アイドルだったが、そんな彼がスクリーンの中ではあまりにも不条理な殺戮を行っていたのだ。稲垣本人のイメージとの、とんでもないギャップ。人間不信に陥った観客がいても不思議ではなかったほどだ。

『正欲』©︎2021 朝井リョウ/新潮社 ©︎ 2023「正欲」製作委員会

 単なる“悪役”とはまた違う、クズなキャラクターを演じてこそ見えてくる、演技者としての力量というものがある。香取が演じる“最低男”が日本を震撼させることはあるのだろうか。そのときが来るならばそれは、うんと心が躍るようなポジティブなものだろう。しかしそれはまだまだ先のこと。もう少しは“日本一の最低男”としての姿を見ていたいものである。

『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』の画像

木曜劇場「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった」

“日本一の最低男”である主人公・大森一平が、家族を、社会を、そして日本を変えていくために奮闘する姿を描く完全オリジナル作品。

■放送情報
『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:香取慎吾、志尊淳、冨永愛、増田梨沙、千葉惣二朗、向里祐香、佐野玲於、橋本じゅん、安田顕ほか
脚本:政池洋佑、蛭田直美、おかざきさとこ、三浦駿斗
演出:及川拓郎ほか
プロデュース:北野拓ほか
主題歌:香取慎吾「Circus Funk(feat. Chevon)」(トイズファクトリー)
制作協力:テレパック
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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