サンジゲン 松浦裕暁が語る、CGアニメの現在地 『MyGO!!!!!』の“ハイブリッド”な魅力

サンジゲン松浦裕暁が語るCGアニメの現在地

『ガルクラ』と『MyGO!!!!!』のクロスオーバーの可能性も?

松浦裕暁

――日本のCGアニメの表現の幅も拡がっています。松浦さんには、日本のCGアニメの現在地はどのように見えていますか?

松浦:CGでアニメが作れるのは確かで、その表現として多様な選択肢が生まれていることは間違いないです。CGに関しては、会社の仕組みがないと作れないものなので、組織の方向性によって発展する方向が違うんです。僕らはとにかく「アニメ」に集中してきました。作画に勝つとか負けるかとかじゃなく、とにかく作画のアニメをリスペクトし、その良さをCGでも発揮できるように追求してきたわけです。僕らのやり方は相当特殊で、ベースは手描きアニメの作り方です。知り合いの会社はライティングの考えがあるけど、僕らはライティングがないなど、アプローチが違うんですよね。そういう意味ではいろいろな映像が出てくるでしょうし、それがスタジオの個性になっていくと面白いと思っています。

壁にずらりと飾られた『BanG Dream!』シリーズのポスター

――例えば、2024年は東映アニメーションの『ガールズバンドクライ』(以下、『ガルクラ』)が話題になりました。あれはサンジゲンとはアニメとしての動かし方が違いましたね。

松浦:全然違いますよね。僕らが目指す方向ではないけど、『ガルクラ』もすごく面白い。すごくアニメーションらしい作りだなとよく話しています。『ガルクラ』は、いわゆる従来のCGの作り方の中にアニメ的な要素を加えたものに見えます。CGの作り方の中でルックをアニメに寄せたというか。

――ベースがCGの作り方でアウトプットはアニメ的になるように作ったと。

松浦:その通りです。でも、セルルックにはしないという意思を感じますし、リアルなライティングの表現方法を探るという意味で、あれは参考になります。

――サンジゲンの場合は、アニメの作り方をベースにCGで作る、似て非なるものなわけですね。

松浦:そうですね。視聴者から見れば、どちらも同じようなものかもしれませんが。僕もこの未来がどうなるのか、イメージはありますけど、本当にその通りになるかはわかりません。CGなのか、作画なのかどっちなんだろうという映像のこの先には、全く異なるものが生まれてもいいと思っています。視聴者にもその心の壁を超えてほしいと思っているので。そのためには、作画のステップを踏んだ方がいいだろうし、最近は海外でもそういう映像を求められているなと感じています。

スタジオの壁に描かれたキャラクターのサイン(左から)花園たえ、宇田川あこ、氷川紗夜のもの

――それにしても『ガルクラ』のトゲナシトゲアリとMyGO!!!!!が対バンするというのは驚きでした(※1)。そういう企画がありなんですね。

松浦:ビックリしましたね(笑)。まあ、僕は『ガルクラ』プロデューサーである平山(理志)さんとは、初期の『ラブライブ!』で組んでから、よく存じ上げています。

――松浦さんとしては、一緒にシーンを盛り上げていければという思いでしょうか?

松浦:はい、こういうのはどんどんやるべきだと思います。ライバル視しすぎて、一緒に出ないというのは誰も得しないでしょうし。ファンが観たいならそれでいいと思うんです。アニメでクロスオーバーすることまであり得るかわからないですけど、もしやるなら、僕はいつでもウェルカムです。『FILM LIVE』を一緒に作ったら面白いかもしれないですしね。

『BEASTARS』は悔しかった

――劇場版「BanG Dream! It's MyGO!!!!!」の後、2025年1月にはTVアニメ『BanG Dream! Ave Mujica』(以下、『Ave Mujic』)が放送予定です。

松浦:2024年の春にはもう完成しています。『MyGO!!!!!』から続けて制作していました。視聴者に物足りないと思われないような内容になっています。僕はもう3回くらい観ましたけど、すごくいいです。中毒になります。

――『Ave Mujica』の放送は『バンドリ!』10年目にあたるのですが、それに恥じない内容であると。

松浦:もちろん、面白さはいつでも更新していきたいと思っていますから。

――もう一つ『ニワトリ・ファイター』の制作も発表されています。こちらはどんな作品になりそうですか。

松浦:また全然違う挑戦になります。CGでアニメを作るのなら、メカばかりじゃなくてきちんとキャラクターの感情を表現できないといけないと思って、ここ5、6年は取り組んできました。進化できた実感はあるけど、もっといろいろなことに挑みたい。例えば、オレンジさんのTVアニメ『BEASTARS』、ちょっと悔しかったんですよね。あれは本当に素晴らしかったと思うし、動物ものは日本じゃ流行らないと思ってたけど、物語の面白さもキャラクター表現も今風だし、すごいなと。

『ニワトリ・ファイター』©Shu Sakuratani/Kino-HERO’s, VIZ Media

――『ニワトリ・ファイター』は動物が主人公ですから、そこに挑めるわけですね。

松浦:原作もあるので、マンガをアニメで表現していくような感覚です。これも年内には完成すると思います。

――サンジゲンは、いつも納品が早いですね。制作ラインの管理がしっかりしている印象です。

松浦:制作ラインの管理は細かくやっているので、スケジュールが大幅に遅延することはほとんどありません。スケジュール管理だけやっていると、みんなに作業スピードを上げてとしか言えなくなってしまうので、工数管理、作業の重さをきちんとコントロールできる仕組みを作っています。全国8か所にあるスタジオをデータベースでつなぎ、全員が同じ仕事をできるようにしているんです。

ハロウィンの装飾が施されたスタジオのエントランス

――その仕組みもどんどん洗練させていってほしいと思います。最後に、5年前に取材した時、松浦さんは『バンドリ!』でやりたいことは、等身大の人間らしさをCGで表現することとおっしゃっていました(※2)。その達成は現在、どの程度だという実感でしょうか?

松浦:お客さんが見慣れてきたという点も含めてですが、僕らも迷いなく作れるようになってきました。僕らはアニメを作っていて、CGアニメを作りたいと思っているわけじゃありません。だから、必要なところには、作画も取り入れることに心の壁が下がったというか、そういう意味でディレクションも進化しているなと思っています。コマ数が増えても、アニメに見えるようになってきたし、質感ももう少し入れてもいいのかもしれない。それは技術的な面の話ですけど、大事なのはアニメに見えるかどうかですから、これからもそこを大切にしていきたいですね。

参考
※1:https://bang-dream.com/events/mygo-togetoge
※2:https://realsound.jp/tech/2019/03/post-326085.html

■公開情報
劇場版『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』
前編:全国公開中
後編:2024年11月8日より公開
原作:ブシロード
監督:柿本広大
シリーズ構成:綾奈ゆにこ
脚本:柿本広大、綾奈 ゆにこ、後藤 みどり、小川ひとみ、和場明子、晴日たに
キャラクター原案:ひと和、植田和幸
キャラクターデザイン:信澤収、もちぷよ
アニメーションキャラクターデザイン:茶之原拓也、八森優香、Shin Joseph
CGスーパーバイザー:奥川尚弥
モデリングディレクター:武内泰久、寺林寛、松田唯※劇場版から参加
リギングディレクター:矢代奈津子、柏木亨
色彩設計:北川 順子、石橋名結、松下由佳※劇場版から参加
撮影監督:奥村大輔
美術監督:山根左帆、対馬里紗
美術設定:成田偉保
編集:日髙初美
音響監督:柿本広大
音楽:藤田 淳平(Elements Garden)、藤間仁(Elements Garden)
音楽制作:ブシロードミュージック、エースクルー・エンタテインメント
アニメーションプロデューサー:松浦裕暁、保住昇汰
アニメーション制作:サンジゲン
製作:BanG Dream! Project、ブシロード、TOKYO MX、グッドスマイルカンパニー、ホリプロインターナショナル、ウルトラスーパーピクチャーズ
キャスト:羊宮妃那(高松燈役)、立石凛(千早愛音役)、青木陽菜(要楽奈役)、小日向美香(長崎そよ役)、林鼓子(椎名立希役)ほか
エンディングテーマ:「 過惰幻 あだゆめ 」(作詞:藤原優樹(SUPA LOVE)、作曲・編曲:hisakuni(SUPA LOVE)、歌:MyGO!!!!!)
©BanG Dream! Project
公式サイト:https://mygo-movie.bang-dream.com/
公式X(旧Twitter):https://x.com/bang_dream_info

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