映画『ぼくまほ』に“刺さる”観客が続出 『366日』に続く口コミ拡大の“泣ける”映画に

もしあなたが一回だけ魔法が使えるなら何に使うだろうか。自分の欲望を満たすために使うのか、それとも誰かの幸せのために使うのか。
2月21日から公開が始まった映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』は、そんな問いかけを観客に投げかけてくる。
本作は、人生でもっとも大事なことを決める18歳から20歳までの間に一回だけ魔法が使えることを知った4人の若者、アキト(八木勇征)、ハルヒ(井上祐貴)、ナツキ(櫻井海音)、ユキオ(椿泰我)の友情と苦悩、それぞれの選択を描く物語だ。原作と脚本をヒットメーカーの鈴木おさむが務めている。

SNSでは「爆泣きしてヤバすぎた」「何回観ても泣いてしまう」「毎回、号泣してる」などという感想が目立つ。一体何がそんなに観客の涙腺を緩ませるのだろうか。
本作に出てくる「魔法」とは、比喩ではなく本当に「魔法」である。願ったことは何でもかなえてくれるが、命に関わることに使うと村の誰かに不幸が降りかかるというルールがある。設定だけ見れば完全にファンタジーだが、ストーリーはあくまでもリアルだ。
アキトはピアノで音大を目指しているが、夢破れた父(田辺誠一)に反対されている。ハルヒは心臓に持病があり、思うような人生を送ることができない。ナツキは父(阿部亮平)が倒れてサッカー選手になる夢を諦めている。ユキオは父(カンニング竹山)が村のダム建設に加担したことで葛藤を抱えていた。幼い頃からとても仲が良く、屈託がなさそうに見える4人だが、それぞれが人生のままならなさに人知れず苦悩している。

彼らのリアルな境遇は、同世代の観客、あるいは同じような経験のある観客の胸に迫るだろう。どれも親世代から渡された困難というのもリアルだ。ある意味、理不尽ですらある。
それだけに、困難にめげないまっすぐな彼らの友情に心打たれる観客が多いはずだ。幼い頃、持病のせいで周囲になじめなかったハルヒをアキトがおんぶして、ナツキ、ユキオとともに鬼ごっこに興じる場面がある。困っている人、寂しそうな人がいたら、見返りなど求めずに手をさしのべる。それは親切というより、一緒に遊びたい、仲間になりたいという純粋な気持ち。そんなピュアさを持ったまま、彼らは18歳になった。混じりっけのない友情の尊さを見て、思わず涙腺が緩んでしまう観客も多いのではないだろうか。

主演の4人の演技は、彼らの友情を表現するのに十分なもの。特に感情を激しくぶつけ合うシーンでは、気持ちがたかぶって思わず涙ぐんでしまうことが多かったという。FANTASTICSとして活動しつつ、ドラマ『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)や『南くんが恋人!?』(テレビ朝日系)などで順調にキャリアを重ねている八木を筆頭に、『虎に翼』(NHK総合)で鮮烈な印象を残した井上、日曜劇場『御上先生』(TBS系)にも出演している櫻井、芸歴が20年を超える椿は、お互いに良さを引き出し合いつつ、良質なアンサンブルを見せてくれている。





















