小野花梨は今後のエンタメ界を背負う存在だ 『べらぼう』で担う重要なポジション

NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』は、主人公である蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)の奔走する姿が観る者の胸をアツくさせるいっぽう、やはり現在の物語の主な舞台が吉原ということもあって、この地で暮らす女性たちの過酷な日常をも描いている作品だ。
第9話「玉菊燈籠恋の地獄」で注目を集めたキャラクターは、うつせみではないだろうか。俳優・小野花梨が演じる女郎である。

本作は、吉原の貧しい庶民の子に生まれた蔦重が、“江戸の出版王”に成り上がっていくさまを描き出すものだ。ここからさらに波乱万丈な人生を突き進んでいくことになる彼はいま、“本”というメディアを利用し、吉原を盛り上げようと奮闘しているところ。だが第9話は少しテイストが異なり、身請けの話を持ちかけられている幼馴じみの花魁・瀬川(小芝風花)と蔦重の恋愛模様が描かれた。
しかし、いまの時点でこのふたりが結ばれることは絶対にない。瀬川は、彼女が籍を置く「松葉屋」の顔であり、彼女を身請けするにはとんでもない額の金が要る。ふたりで手を取り合って吉原を抜け出す選択肢もあるにはあるが、その後の人生は暗いものになると決まっている。果たしてどうすればよいのか。このような物語の流れの中でフォーカスされたのが、小野が演じるうつせみだった。
うつせみは遊女の世界において、自分の客を接待するための座敷を持っている中堅の女郎であり、「松葉屋」では瀬川や松の井(久保田紗友)に次ぐ存在。そんな彼女に強く惹かれる小田新之助(井之脇海)とともに吉原からの脱走を試みるが、やはり失敗に終わり、女将たちから折檻を受けることになったのだ。演じる小野に用意されていたシーンやセリフはごくかぎられていたが、ひとりの女性の藁にもすがる思いを体現する演技を展開していたと思う。

そんな小野が大河ドラマに登場するのはこれが初めてだ。本作の公式ガイドである『NHK大河ドラマ・ガイド べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~ 前編』にて彼女は「うつせみに共感するのは、いちばん大事な場面で自分の心が動くほうを選択する“直感力”。私もうつせみも、行動するタイプの人間だと思います」と、自身と役との共通点について述べたうえで、「うつせみは、10歳くらいで吉原に来たということで、恐らく吉原がどのような世界なのか分かっていたでしょう。自分の宿命にあらがわず、他者に対してつらい顔を見せる描写はあまりありませんが、それは女郎の仮面をかぶっているだけで、笑顔の裏にはたくさんの悲しみを隠しているのではと想像しています」と語っている。





















