音尾琢真×古川琴音は『どうする家康』の“ベスト夫婦” 鳥居元忠、最後の戦いを見逃すな
『どうする家康』(NHK総合)の第42回「天下分け目」では、関ヶ原の戦いの前哨戦ともいわれる伏見城の戦いが描かれる。上杉征伐を決断した徳川家康(松本潤)が伏見城の留守居を任せたのは、忠義に厚い家臣団の中でも「徳川一の忠臣」を自負する鳥居元忠(音尾琢真)だった。
家康の人質時代からいつもそばに仕え、戦では身を挺して殿を守り、家康に辛いことや悔しいことがあると一緒に泣いてくれる。家康にとって家臣という存在を超え、自分のことを何でも知ってくれている友のような存在が元忠なのだ。
会津への出陣を前に家康は「留守を任せられるのは、最も信用できる者。逃げることは許されぬ。必ず守り通せ」と元忠に告げた。何があっても逃げ出すことなどない忠誠心みなぎる元忠は「殿のお留守、謹んでお預かりいたします」と神妙な面持ちでその役目を引き受けた。
そして「わしは平八郎や直政のように腕が立つわけでもねえし、小平太や正信のように知恵が働くわけでもねえ。だが、殿への忠義の心は、誰にも負けん。殿のためならこんな命、いつでも投げ捨てますわい。上方は、徳川一の忠臣、この鳥居元忠が、お守りいたしまする」と目をうるませる。50年にわたり共に成長してきた殿への思いがあふれてくるのだろう。いつもの明るい笑顔をつくっても、涙を止めることはできない。
「めそめそするとまた千代にひっぱたかれる」と、元忠に嫁いだ千代(古川琴音)が健在であること、家康の計らいで夫婦になった2人が睦まじく暮らしていることが元忠の口調からも伝わってくる。
元忠の家康へのまっすぐで、少し不器用だけれどブレることのない忠義の心は変わることがないだろう。だが、元忠が愛する千代はどのようにこの伏見城の戦いを受け止めるのだろうか。
古川琴音演じる千代は、武田家の重臣の娘として生まれ、戦で夫を亡くしてから歩き巫女として活動し、その才能を武田信玄(阿部寛)に見出されて諜報活動を開始。信玄の没後は後を継いだ武田勝頼(眞栄田郷敦)の命により、家康の正妻・瀬名(有村架純)に近づいた。
千代の目的は諜報・調略だったとしても、瀬名に会うために築山に通い、瀬名と話をするうちに戦国の世を生きる女性として共鳴した千代の内面にも変化が生じたのだろう。瀬名が理想のために行動を起そうとしたことがきっかけで起きた「築山事件」を境に千代は忍び働きをやめて、そのまま姿を消していた。
家康の命で千代を探し出したのが元忠で、千代を見つけ出していながら密かに彼女をかくまっていたのだ。それが発覚して騒ぎになり、裁きを受けることになったが、家康はただ「忍びの過去を捨て、鳥居元忠の妻となるがよい」とだけ言い渡した。そもそも家康が千代を探したのは恨んでいたからではなく、どうしているのかと身を案じてのことだった。