泣かないナミ、惚けないサンジ 『ONE PIECE』実写化に配慮した小ネタ要素の改変

『ONE PIECE』小ネタ要素の改変

 全世界での配信がスタートしてから、つねに話題作であり人気作であり続けるドラマ『ONE PIECE』(Netflix)。あの人気マンガがどのように実写化されるものかと熱視線を集めていたが、フタを開けてみたところ概ね好評のようだ。とはいえ、そんな声を上げている人々の多くが、再現度の高さについての言及に終始している感は否めない。たしかにうまい具合に再現したものだとは思うのだが、それ以上に讃えるべきは実写化に際しての改変の妙なのではないだろうか。

 作品全体の構成に手を入れ、この改変が功を奏していることに関してはすでにほかの原稿内で述べた。

実写版『ONE PIECE』が描く“支配と解放”というテーマ 原作とは違うドラマならではの構成

果たしてどうなるものかと懸念されていたものの、あちこちから好評の声があがっているいま、「実写化成功!」と断言したいNetflix…

 しかし、このドラマの魅力は細部においてもいくつも挙げられる。ここでは、主人公・ルフィが率いる麦わらの一味の特定のメンバーについて言及したい。やがて世界中にその名を轟かせることになるこの少数精鋭の海賊団が、グランドラインに入る前からのメンバーであるナミとサンジだ。

 この2人に対して、どのようなイメージを持っているだろうか。原作に関して言えば、グラマーでスタイルを売りにしているところのあるナミと、そんな彼女や女性全般に対して惚けては贔屓をするサンジ、という構図ではないだろうか。原作ではこの構図が少年マンガ特有のギャグ要素として、「くだらない!」と思わず苦笑してしまうポイントとして機能している。けれどもこれを、生身の人間が演じるドラマにおいてそのまま実写化した場合、おそらく苦笑すら生まれないだろう。いや、もちろんバランスにさえ気をつければ、ドラマに取り入れることも可能かもしれない。ドラマや映画などの実写作品においてナミのような“お色気”を武器にする女性キャラクターは多かれ少なかれ登場するし、“女性に弱い”男性のキャラクターというのも少なくない。要は原作ほど過度な強調をしなければいいわけだ。

 しかしこのドラマは違う。ナミは色仕掛けを武器にしないどころか、原作マンガのようなあのいかにもマンガ然としたスタイルの持ち主ではない。そしてサンジはというと、相手が女性だというだけで過剰な反応を見せることはしない。サンジに関しては、むしろドラマ版のほうが“紳士”だといえるものだろう。なぜこのような改変がなされたのだろうか?

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