実写版『ONE PIECE』が描く“支配と解放”というテーマ 原作とは違うドラマならではの構成

『ONE PIECE』が描く“支配と解放”

 果たしてどうなるものかと懸念されていたものの、あちこちから好評の声があがっているいま、「実写化成功!」と断言したいNetflixドラマ『ONE PIECE』。原作であるマンガ作品とその映像化作品は似て非なるものであり、そこには異なる評価軸があって当然のはず。アニメ化の場合は原作をなぞることも可能だが、実写化でそれをやってしまうと大変なことになる。原作マンガの持つエネルギーやリズム感を損なうことなく映像にして視聴者に届けられるのがアニメーションであるいっぽう、生身の人間が演じるドラマならば大幅な改変が必要だ。結果としてこのドラマは、構成が見事な作品に仕上がっている。

 では、本作の構成は原作と比べてどのようなものになっているのかーー。

 まず、全体的に大胆な省略がなされている。たとえば、原作で細かく描かれていた人物同士のやり取りやエピソードは、ごっそり削り取られているか、あるいは削り落とされたぶんコンパクトにまとめ上げられている。尾田栄一郎による『ONE PIECE』の特徴のひとつとして、描写の細かさが挙げられる。物語の本筋とは関係ないように思える取るに足らないやり取りが、少年マンガの特色である“ギャグ要素”として散りばめられている。それらが意外なところで回収され、つながり合ったりするのが『ONE PIECE』の面白さでもあるだろう。特に最新巻である第106巻までくると、一つひとつのコマには絵や文字がぎっしりと描き/書き込まれており、この情報量の多さがそのまま作品の迫力にも影響しているように感じる。

 全8話からなる実写版『ONE PIECE』でベースとして描かれているのは原作の第11巻まで。ルフィたちがアーロン一味を打ち倒し、ナミが正式な仲間になるまでだ。ただ、原作ではもっとずっと後のほうで登場するガープが最初から物語に関与していることや、第12巻にてグランドラインに突入する前に麦わらの一味が行う「進水式」のシーンが描かれてもいる。原作の第11巻までには見られないこの2点からだけでも、実写化するにあたって作品全体の構成が変わったのが分かるだろう。

 しかしこれだけではない。このドラマで主人公・ルフィが敵対するのは順に、アルビダ、モーガン、バギー、クロ、そしてアーロンだ。そう、あの首領クリークがいない。いや、正式には登場はするのだが、彼はルフィたちにまでたどり着くことなく海に散っている。原作でのクリークはグランドラインに入ろうと挑むも敗れ、破れかぶれの精神状態で海上レストラン・バラティエを乗っ取ろうとするのだが、そこで料理人のサンジやルフィたちに完全に潰されるのだ。

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