“幻”の中国ドラマ『光・淵』の魅力を熱弁! 駱為昭×裴溯の凸凹バディが推せる理由

日本のみならず、中国ひいてはアジアのドラマファンが熱視線を送る話題作が、今まさにWOWOWで世界初放送&放送中。その作品はサスペンスドラマ『光・淵(こうえん)』(以下、『光・淵』)です。日本にも多くのファンがいる中国ドラマ『陳情令』の制作陣が、こちらも大ヒットドラマ『鎮魂』『山河令』などの原作者として知られる人気作家priestの小説『黙読』をドラマ化したとあり、2023年に本国で配信された時から注目を集めていました。しかし、第8話まで更新されたところで突然配信が止まり、その後全プラットフォームから削除されてしまったのです……。
そんな幻のドラマがWOWOWで全話放送されると発表された時は、中国でも微博(ウェイボー)の検索ワードランキングを賑わせるほど話題になりました。
3月28日に第8話が放送され、ストーリーはいよいよ誰も見たことのない第9話へ。海の向こうでも一日千秋の思いで更新を待ち続けてきたファンたちが、固唾をのんで放送を見守っているというわけです。
『光・淵』には“精読”したくなる面白さが詰まっている!

『光・淵』とは、一体どんな物語なのでしょうか? 舞台は、今現在とは違う文明にある自由貿易港・新洲という設定。そこではDNA変異により、他人との共感が欠如した“零度共感者”による犯罪が増加していました。そんな新洲で“最後の希望”と人々に期待されているのが、凶悪犯罪を扱う特別捜査部(SID)です。このドラマの主人公は、そのSIDの第六隊長・駱為昭(ルオ・ウェイジャオ)と、若くして巨大グループの総裁を務める裴溯(ペイ・スー)。裴溯は駱為昭が7年前に最初に担当した事件の関係者で、彼の心に闇を感じる駱為昭と、自身を“零度共感者”ではと疑う裴溯の間にはわだかまりがありました。そんな2人が、ある殺人事件をきっかけに再び過去に対峙し、共に事件の謎を紐解いていきます。
『光・淵』の魅力はまず、作り込まれた世界観とストーリー展開。シーンやセリフを一つひとつ“精読”したくなるような面白さがあります。これからオンデマンドで追いつこうという皆さんに、「なんとなく観ていれば分かるから大丈夫!」などと、すぐバレるウソをつくつもりはありません。“視聴者のために分かりやすく作りました”という親切設計ではないところが中国ドラマの容赦ないところであり、大きな魅力でもあります。

これは壮大な世界観を描くことを得意とする原作者Priestの作品の特徴でもあるのですが、近未来SFの要素、社会問題や経済格差、犯罪や汚職といった骨太なテーマを盛り込みながら、緻密で濃厚な人間ドラマが展開していきます。全30話と中国ドラマとしては決して長くないのですが、他国のドラマと比べれば十分ボリューミーな尺を存分に使い、じっくり考察したくなる仕掛けをいっぱいちりばめている。まるで小説のように読み込み、深掘りしたくなるのです。
フー・シンボー×チャン・シンチョンのケミストリーのよさ

深掘りしたい気持ちを駆り立てる原動力は、なんといっても主役の2人のケミストリーのよさ。退廃的な美しさと色気をたたえた裴溯と、実直で優しい正義漢の駱為昭が実に魅力的で、この2人の過去に何があったのか? 言葉の裏にある真意は……? などなど、気づけば2人の心の動きをじっくり読み解きたくなるマジックにかかっています。
闇を感じさせる中にも時折かわいげのある言動を見せる裴溯と、そんな彼を懐深く見守る駱為昭。互いへの信頼や慈しみなどさまざまな感情を、主演の2人が目線1つ、指先の動きに至るまで神経を行き渡らせて演じています。ストーリー自体はアニメ化してもぴたりとハマりそうな架空のファンタジーのため、実写にすると、どこまでリアルに見せられるかどうかが視聴者の心をつかむポイントであり、俳優陣の力量が試されるところ。その点でこの作品は大成功と言えるのではないでしょうか。

裴溯役の張新成(チャン・シンチョン)は、どんな役柄でも自分のものにしてしまう実力派です。血縁関係がない3兄妹の家族愛を描いた『家族の名において』から男女入れ替わりラブコメディ『君(あなた)になるあの日』、さらに中国版『のだめカンタービレ』(『キミと奏でる交響曲〈シンフォニー〉』)の千秋先輩役まで、徹底した役作りには定評があります。原作の「黙読」を読んだことがある方なら、裴溯の再現度の高さに驚くでしょう。

駱為昭役の付辛博(フー・シンボー)は、2007年オーディション番組をきっかけにデビュー。本作ではベテラン刑事役ということで無精髭をたくわえていますが、もともと中国アイドルの先駆け的存在として人気を博した爽やかな美男子です。その後、芸能界の浮き沈みも経験してきたなかなかの苦労人で(本作も本国ではお蔵入り状態ですし……)、だからというのはやや強引ですが、演技力だけでは出せない大人の包容力を感じさせ、裴溯が安らげる相手として説得力があります。最近ではヒット作『慶余年2~麒麟児、挑む~』の大皇子役も好評で、天性の花と実力を兼ね備えた俳優として着実に評価を高めています。

そして、これも中国ドラマの特徴の1つですが、長尺なぶん周辺のキャラクターまで豊かに肉付けされています。駱為昭の同期で副隊長の陶沢(タオ・ゾー)をはじめ、SID第六部隊隊員一人ひとり、さらに事件の関係者に至るまで、みんなキャラが立っている。そして演じる俳優たちがまた巧く、中国芸能界の層の厚さを感じます。




















