『下町ロケット』『アキラとあきら』など WOWOWドラマ版で堪能する池井戸潤原作作品

WOWOWドラマ版で堪能する池井戸原作作品

 社会現象を巻き起こした『半沢直樹』シリーズをはじめ、『下町ロケット』や『陸王』など、2010年代から2020年代にかけて映像化が相次いでいる池井戸潤作品。銀行員や中小企業で働く人々にフォーカスを当てた作品が多く、社会派作品でありながら極上のエンターテインメントとして昇華させる、もはやあらゆる枠組みを超越した“池井戸潤原作”というひとつのジャンルを確立していると言っても過言ではないだろう。

 もちろんそれはテレビドラマだけではなく、映画にも波及している。8月26日からは池井戸作品としては3作目の映画化となる『アキラとあきら』が公開される。竹内涼真と横浜流星がダブル主演を務め、メガホンを取ったのがこれまで恋愛映画や青春映画を多く手掛けてきた三木孝浩監督という意外性もさることながら、700ページを超える長編小説である原作が、どのようにして1本の映画にまとめられているのかには注目しておきたいところだ。

『連続ドラマW アキラとあきら』

 この『アキラとあきら』は、原作の書籍化と同じ2017年にWOWOWの「連続ドラマW」枠で映像化されている。その際にダブル主演を務めたのは、向井理と斎藤工。大企業の御曹司で次期社長という宿命に抗おうとする階堂彬(向井理)と、父が経営していた零細企業の倒産によって過酷な運命に翻弄されてきた山崎瑛(斎藤工)。正反対の境遇に置かれながらも交差し合う2人の人生が、オイルショックに揺れる1970年代からバブル景気のまっただなか、そして2000年代までの激動の時代と共に描かれていく。

 通常4話〜6話ほどで展開することの多い「連続ドラマW」だが、『連続ドラマW アキラとあきら』は全9話。約30年にもわたる重厚で濃密な物語が描かれる原作の要素を余すところなく収め、映像としてのクオリティも保つ。まさに「連続ドラマW」でこれまで幾度となく実践されてきた小説のドラマ化の醍醐味を存分に味わうことができる作品だ。映画版を観る前に原作小説を読んで予習をする人も少なくないだろうが、あわせてこの「連続ドラマW」版を観るという選択肢も面白いのではないだろうか。

『連続ドラマW アキラとあきら』

 池井戸作品がこれほどまでに支持を集め、そして同じ作品であっても何度も繰り返し映像化されているのは、それぞれの作品の持つテーマ、物語に底知れぬ普遍性があるからに他ならない。たとえ時代・舞台設定がピンポイントで用意されているものであっても、近い将来それが別の設定に置き換えられて汎用されていくことも充分考えられる。さながら世界中で長年にわたって親しまれ続けている、あらゆる“古典”と同様だ。それだけに、新たに映像化されるたび、登場人物を演じる俳優たちによって異なる魅力や味わいが与えられる。演者の選択が作品のカラーに如実に影響するというのは、キャスト・スタッフすべてが“作り手”であるあらゆる映像作品にとってこの上なく模範的である。

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