テラシマユウカと入江悠監督が語り合う、ジャンルにとらわれずに映画を観る楽しさ

テラシマユウカ、入江悠監督と語り合う

「自分にとって次の10年に向かっていくような作品に」

ーー事実、入江監督は『サイタマノラッパー』『AI崩壊』にドラマ『ネメシス』(日本テレビ系)、そして今回の『聖地X』と様々な作品を撮ってきました。

入江:もともと僕は、ジャンル映画、いわゆる昔のプログラムピクチャーみたいなものがすごく好きだったんですよね。ただ、ずっと作っているとなんとなくゴールが見えるようになってきてしまって。こういう構造や物語の展開だとお客さん側がこう感じるという方程式みたいなものが分かってくるとつまらなく感じるようになったんです。だから、自分がお客さんがどう思うかわからない作品に挑戦したいという気持ちはありますね。「泣ける」とか「笑える」とかではなくて、どういう気持ちで帰ったらいいんだろうと思わせるような映画を作りたいです。そういう意味で、『聖地X』は狙ったわけではないですが、図らずも自分にとって次の10年に向かっていくような作品になったのかなと思っています。

ーー宣伝としては大変かもしれません(笑)。

入江:そうですよね(笑)。でも、友達同士で観に行って、「すごく怖かった」という人と、「めっちゃ笑った」という人がしゃべりながら帰っていくとかすごく楽しい映画体験だろうと思うんですよ。今回も、岡田将生くん目線で観るのと、川口春奈さん目線で観るのでは、感じ方が全然違うんじゃないかな。

ーーテラシマさんはどちらの目線で観ましたか?

テラシマ:どちらかと言うと、岡田将生さん目線で観たかもしれないです。

入江:岡田さん目線で謎解きをするような感じですか?

テラシマ:そうですね。岡田将生さんと一緒に怪奇現象の仕組みに気づいていくイメージです。なんなら自分が先に気づいてやろうと思って観ていました(笑)。

入江:それは本当にミステリー好きの方の発想ですよね。川口春奈さん演じる妹の要の目線で観ると、たぶんもうちょっと情緒的というか、自身の人生に重ね合わせる方もいると思うんです。確かに『聖地X』は終盤では、自分が子どものときにハマっていた探偵ものっぽさもあって、大人になった今でも影響を与えているんだと感じますね。

ーーテラシマさんにとっての映画のルーツは?

テラシマ:家族で映画を観ることが多くて、家にDVDがたくさんあったんです。兄弟も多かったので一緒に観て、覚えている台詞をどっちが早く言えるかみたいな遊びをしていました(笑)。上京してきて1人になってからは、観ない時期が続いていたんですが、1人の時間をどう過ごしたらいいのかわからなくて映画館にめちゃくちゃ通うようになって。そうしたら、子どもの頃の楽しさを思い出したというか。また、映画の世界にどっぷりハマるようになりました。

入江:家族で観て記憶に残っている1本とかあります?

テラシマ:『ハリー・ポッター』は新作が公開されるたびに家族揃って観に行っていました。好きなキャラクターが死んじゃったときには、泣きながら帰ったりしました。あと、祖母に連れて行ってもらった『Mommy/マミー』という映画があるんですが、それも印象的でした。

入江:『Mommy/マミー』ってグザヴィエ・ドランの映画ですか? それをおばあちゃんに連れていってもらうってすごいですね。

テラシマ:あの映画が自分の人生で大きいターニングポイントになったと思います。生きていく中の節目に映画が自然とありましたね。

入江:僕も最近(アルフレッド・)ヒッチコックの『鳥』という作品を観直したんですが、昔観た記憶があると思ったら家族で観たことがあったんです。僕が小学生ぐらいの頃だったと思うんですが、そういう幼いときに観た映画って記憶にすごく残っているんですよね。

テラシマ:確かに。観る前後の思い出も残っているからかもしれませんね。

ーー最後に、テラシマさんから入江監督に聞きたいことは?

テラシマ:入江監督のインタビューをいろいろと読ませていただいて、映画界の労働環境の改善やミニシアターの支援活動などへの積極的な姿勢に感銘を受けました。今後の映画界全体で入江監督が目指すビジョンはありますか?

入江:『聖地X』を撮ったとき韓国に訪れてわかったことなんですが、韓国はすごく若いスタッフが多いし、休憩時間や撮休もしっかりとっているんです。そういう点では日本はまだ少し遅れているのかなと。40代になって、中堅と呼ばれるポジションにもなってきたので、僕らがいい方向に変えていかないと、今後出てくる若い監督やスタッフ、俳優が業界のせいで苦労したというときにそれは僕らの世代の責任になると思います。せっかく韓国で良い環境を見せてもらったので、少しでも日本映画にそれを持ち込みたいし、日本映画界ならではの新しい発想も生み出していきたいです。映画の世界に入るかYouTuberになるかだったら後者を選ぶ人が多い時代じゃないですか? 少しでも映画の働く環境はよくしていきたいです。

テラシマ:確かに、映画界に飛び込む敷居が低くなったらさらに面白くなりそうです! 入江監督、本日はありがとうございました。

入江:こちらこそ、ありがとうございました。

■公開・配信情報
『聖地X』
劇場・配信同時公開中
配信:auスマートパスプレミアム、TELASAにて配信中
対象:auスマートパスプレミアム会員(月額情報料548円/初回30日間無料)、TELASA会員(月額情報料618円初回15日間無料)
出演:岡田将生、川口春奈、渋川清彦、山田真歩、薬丸翔、パク・イヒョン、パク・ソユン、キム・テヒョン、真木よう子、緒形直人
監督・脚本:入江悠
原作:前川知大『聖地X』
音楽:SOIL&”PIMP”SESSIONS、海田庄吾
エンディングテーマ:SOIL&“PIMP”SESSIONS「Face」(Getting Better / Victor Entertainment)
企画:東映、ロボット
制作プロダクション:ロボット
共同制作:B.A.エンタテインメント
配給:GAGA /朝日新聞社
(c)2021「聖地X」製作委員会
公式サイト:https://seichi-x.com/
公式Twitter:@seichiX_movie

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