新作主演映画でカルト指導者に? レオナルド・ディカプリオは再びオスカー像を狙えるか

L・ディカプリオのオスカーへの軌跡

 レオナルド・ディカプリオが、実在のカルト教祖ジム・ジョーンズを描く新作映画『Jim Jones(原題)』で、主演と製作を務める見込みだと米Deadlineが報じた。彼が演じることになるというジョーンズは、1955年に教団を創設し、1978年に南米ガイアナに教団が開拓した集落ジョーンズタウンで、信者たち918人と集団自殺したことで知られる人物だ。これまでにも歴史上の人物を多く演じてきたディカプリオが、またしても伝説的な人物を演じるとのことで注目が集まっている。ここでさらに気になるのは、若いころから実力派として認められながらアカデミー賞とはあまり縁のなかった彼が、2015年の『レヴェナント:蘇えりし者』以来、再びオスカー像を手にすることができるのかということだ。今回は、これまでの彼の出演作を振り返りながら、その可能性を探っていきたい。

19歳にしてオスカーにノミネート 実力派イケメン俳優として人気者に

 レオナルド・ディカプリオの一躍名を世に知らしめたのは、1993年に出演した『ギルバート・グレイプ』だ。同作で彼は、ジョニー・デップ演じる主人公の弟アーニーを演じた。知的障害を持つアーニーは、純粋で無邪気な少年だが、それゆえに周囲の人々をイラつかせることもある。この難役をディカプリオは実に自然に、リアルに演じ、批評家から大絶賛された。そして19歳にしてアカデミー賞助演男優賞にノミネート。しかし受賞には至らなかった。

『タイタニック』(c)1997 Twentieth Century Fox Film Corporation and Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

 次に彼が世界中の注目を集めたのは、1996年の『ロミオ+ジュリエット』だ。シェイクスピアの名作を現代風に大胆にアレンジしたこの作品で、彼は魅力的なロミオを演じ、ベルリン国際映画祭で男優賞を受賞。また、イケメン俳優として多くのファンを獲得した。さらに彼は1997年の『タイタニック』で不動の人気を獲得することになる。もはや説明不要のこの大ヒット作で、彼は上流階級の娘ローズ(ケイト・ウィンスレット)と、身分違いの恋に落ちる貧しい画家志望の青年ジャックを演じた。2人の運命的なロマンスを歴史に残る大事故に絡めて描き出した同作で、ディカプリオは若く美しく、情熱的な青年を演じ、その輝くような魅力で世界中を夢中にさせた。ジャックの悲劇的ながらもローズへの愛をなによりも優先した最期には、多くの人が涙したことだろう。しかしここで意外な事態が起こる。『タイタニック』は高い評価を獲得し、オスカー最大14部門にノミネート、そのうち作品賞と監督賞を含む11部門受賞を達成した。そんななか、主演のディカプリオはノミネートすらされなかったのだ。ここから彼のオスカーへの険しい道のりが始まったと言ってもいいだろう。

イメージチェンジを成功させるもオスカーには届かず

 その後イケメン路線でいくつかの映画に出演するも、不遇の時代がつづく。実力派俳優の呼び声はどこへやら、1998年にルイ14世と鉄仮面伝説をモチーフに一人二役を演じた『仮面の男』では、最低映画の祭典ゴールデンラズベリー賞でワースト・スクリーン・カップル賞を受賞する不名誉を受けてしまった。

 2002年、ディカプリオはイケメン俳優からのイメージチェンジを図る。マーティン・スコセッシ監督の『ギャング・オブ・ニューヨーク』に出演し、ダークな役に挑戦したのだ。彼はアイルランド移民のリーダーだった父をギャングに殺され、復讐に燃えるアムステルダム・ヴァロンを演じた。父の仇であるウィリアム・ブッチャー(ダニエル・デイ=ルイス)の懐に入り、虎視眈々と復讐の機会を窺うアムステルダムだが、その人となりを傍で見るうちにブッチャーに尊敬の念すら抱くようになる。さらに彼が父に敬意を払っていたことを知り、復讐への思いは揺れる。ディカプリオはその微妙な心情を細やかに演じながら、壮絶な展開へとなだれ込む終盤では鬼気迫る表情を見せた。ブッチャーとの一騎打ちのシーンは、さすがの迫力だ。しかしここでも彼は予想外の事態に見舞われる。なんとディカプリオを差し置いて、敵役のダニエル・デイ=ルイスがアカデミー賞主演男優賞にノミネートされてしまったのだ。彼は受賞こそしなかったものの、ディカプリオにとってはショックだっただろう。

 彼がようやくアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたのは、2004年の『アビエイター』でのことだった。ディカプリオが演じた実在の大富豪ハワード・ヒューズは若く野心に満ち、映画の製作や航空機開発で莫大な財産を築いていく。しかしその一方で、彼は強迫性障害に悩まされるようになる。母の影響でもともと潔癖症気味だった彼だが、次第に公共のものには直接触れることができなくなってしまうのだ。さらには細菌を恐れるあまり服も着られなくなり、全裸で試写室に閉じこもる生活を送るようになった。精神を蝕まれていくヒューズを体現するディカプリオの演技は痛々しく、観客の胸をえぐる。この役でディカプリオは初めて主演男優賞にノミネートされたが、オスカー像には手が届かなかった。

 内戦下のアフリカを舞台に、違法ダイヤモンドをめぐる非情な現実を描いた『ブラッド・ダイヤモンド』(2006年)で、ディカプリオは再び主演男優賞へのノミネートを果たす。彼が演じた紛争ダイヤモンドの密売人ダニー・アーチャーは、アフリカの現状を傍観し、自らの儲けだけを考えていた。しかし彼は、真実を世界に伝えようとするジャーナリストのマディー(ジェニファー・コネリー)や、反政府武装勢力に息子をさらわれたソロモン(ジャイモン・フンスー)との出会いによって少しずつ変わっていく。元少年兵の更生施設での交流や激しい戦闘シーンなどを通して、ディカプリオはその微妙な変化を説得力をもって演じきった。しかしこの作品でも、アカデミー賞では涙をのむ結果に終わる。

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