『ラジエーションハウスII』で知る“安心”の形 山口紗弥加演じるたまきの親子愛
たまき(山口紗弥加)がぎっくり腰に襲われた翌日、ラジエーションハウスに母・るり子(中田喜子)が訪ねてくる。前クールに放送された同じ大北はるか脚本の『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)でも、主人公の父親が突然病院に訪ねてくるというエピソードがあったように、とりわけお仕事系ドラマでは比較的よくあるシチュエーションともいえる“親の訪問”。主人公格の親ではないという珍しさはあれど、土産片手に結婚を勧めにやってきて、一悶着ありながら仕事に没頭している姿を見て満足して帰っていくという何ともオーソドックスなスタイル。それでもしっかりと“ラジハ色”に染まる物語に帰結させるのだからさすがである。
唯織(窪田正孝)ら同僚に次々とたまきとの結婚を持ちかけるるり子に苛立つたまき。一方、40歳の堀田成美(臼田あさ美)が弁護士の夫・誠司(忍成修吾)に付き添われて救急搬送されてくる。腹痛を訴えていた彼女のレントゲンを見た杏(本田翼)は便秘であると診断するのだが、唯織は年齢的にも大腸がんの可能性もゼロではないと検査を提案する。しかし時間も負担も大きいことから成美は大腸内視鏡検査を断る。そんな中、ラジエーションハウスの面々に連れられて居酒屋にやってきたるり子が突然転倒。頭を強く打ったことから甘春総合病院に運び込まれてくるのだ。
10月25日放送の『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)第4話のテーマを一言であらわすなら「安心」の10画に尽きる。“結婚=親を安心させる”という、現代的な価値観では否定されがちではあるが一概に全否定はできない古風かつ他者のための「安心」のかたちに、病気を見つけるためだけでなく自らの不安を取り除くために検査をするという、いかにもラジハ的な「安心」のかたち。その両者を立てつつも、「子供のことを思う限り多分、親の心配って尽きない」と語る唯織のセリフで均衡が取られる。
そもそも心配事もなく心が安らかな状態、という極めて漠然としたものである以上、「安心」にはたしかな正解は存在しない。こうした抽象的なテーマを形作るように、対になり得る具体も提示される。ひとつはるり子が語る「1人で生きるって暇よ」という、経験に基づく台詞。そしてもうひとつは安心を得るために検査を受けた成美の腸が、まったく問題なかったことがわかり、誠司が嫌味っぽく言う「無駄な検査だった」と言う言葉。どちらも一理ある反面、考え方次第でいかようにも解釈できるものとして受け取れる。終盤で杏が消化器内科のドクターに「内視鏡」か「CTコロノグラフィ」を患者が選べるように提案しようとしている通り、おそらく最も安心なものは、そこに複数の選択肢があることなのではないだろうか。