かもめんたる 岩崎う大、脚本づくりは“悲劇”の空想から? 「決して飽きられないように」
お笑いコンビ・かもめんたるとして活動するかたわら、劇団かもめんたるを旗揚げし、原作・脚本・演出を担う顔も持つ岩崎う大。岸田國士戯曲賞に2年連続でノミネートされるなど、今、注目をされている脚本家である岩崎が脚本を手がけるHuluオリジナル『THE LIMIT』が配信中だ。
岩崎は、本日配信されたばかりの第3話「ユニットバスの2人」と4月2日配信スタートの第5話「切れない電話」の脚本を担当し、「ユニットバスの2人」では出演も果たしている。本作の脚本づくりで意識したことや、本作のテーマとなる「究極の選択」をした経験について聞いた。(編集部)
「悲劇と喜劇は紙一重」
――企画を聞いた時の率直なお気持ちは?
岩崎う大(以下、岩崎):リミットという極限状態のお話ということで、制限が多いですよね。観るのはすごく楽しいですけど、自分が書くとなるとハードルが感じられて、大丈夫かなと言うのが正直な気持ちでした。「言ってることはわかりますよ? でもね?」って(笑)。不安はありましたけど、自分的におもしろそうだな、という設定が浮かんでからは楽しくなりました。
――今回、2つのお話の脚本をご担当されていますが、最初から2個案を出したのでしょうか?
岩崎:そうですね。最初から2個出しました。
――“リミット”というテーマを聞いて、初めに思い浮かんだのがその2案だったんですか?
岩崎:いや、最初はどこかに閉じ込められたりするのが“リミット”というイメージがありました。でも、今回は回想シーンとかも入れられないんですよ。ワンシチュエーションなので、他の場所でロケができないっていうリミットもあって(笑)。大抵、今はこの場所に閉じ込められているけど、1時間前にはこんなことがあって……という形で話が広がっていくんですけど、それもナシ。ほんとにほんとの密室劇ですよね。その“リミット”というハードルをどう乗り越えていくのかが、最初の勝負どころでした。そこから、自分なりの飛び越え方をしなきゃいけないなと思って考えていくうちに、“場所”から物理的に出られないとかじゃなくて、“心情”として出られなくなるシチュエーションのほうが、おもしろくなるなと思ったんです。
――一場面で見せるというのは、コントに近いのかなと思いました。
岩崎:コントっぽいですよね。コントでも、「ツッコミがボケに対してそんなに怒るんだったら、2人ともどっかに行けばいいのに」って、ダメ出しとかでよく言われるんですよ(笑)。だから、2人がその場でどうしても意見をぶつけ合わなきゃいけない、どうしても関わり合っていかなきゃいけない状況が、自然と観られるのがいいコントだと僕は思っていて。離れたいけど、離れられないっていう。
――そのお話を聞くと、ますます作品を生み出す難しさを感じます。岩崎さんは普段から「もしもこうだったら」という目線で世の中を見ているのかなと思うのですが、いかがでしょうか?
岩崎:たしかに、何かのシチュエーションを見た時に「この人が、ここでこういう言葉を言うと、完璧な一枚の悲劇の絵になるな」とか空想するのは好きですね。よく言われていますけど、悲劇と喜劇は紙一重で。人が悲劇的な目にあっているのって、やっぱり笑っちゃうんですよ。僕の中では別に意地悪な目線で笑っているわけではなくて、「ああ、わかるなぁ」とか「かわいそうだなぁ」とか思いながら。で、実際にそういうところからコントになっていきますからね。
――なるほど。今回も、岩崎さんらしい二転三転していく展開がとてもおもしろかったです。
岩崎:約30分間を「あっという間だったな」と思わせたいというのが一番にありました。僕がコント出身の人間だからなのか、飽きられたら終わり、と染みこんでいる部分があって。一時も「あれ? もしかしてこれ、つまんない?」と思われたくない。実は、そういうところではせっかちかもしれないです。たとえば映画とかで、90分間ぎゅうぎゅうに詰まってる作品は不可能に近いし、もし存在したとしても、あまりおもしろくないと思うんです。でも30分だったら、ぎゅうぎゅうに詰めても“すごい体験のまま、あっという間に終わったな”ができる時間なのかなって。30分ゆったりしているのもアリだとは思うけど、僕の場合はめくるめく展開、決して飽きられないようにっていうのを意識しました。
――たとえば第3話『ユニットバスの2人』では、冒頭の冷蔵庫の開けるシーンでも「ああ、そうか」と発見があって。一度見るだけじゃダメなんだと思いました。
岩崎:すごく細かいですよね。あれは、脚本にはなかったことなんですよ。あまり話すとネタバレになってしまうけど、島田(細田善彦)と彼女の関係性も、意図的に「どちらでもいけるようにしよう」と打ち合わせで話し合ったんです。実際、うちの奥さんに見せたら、「恋人じゃないの?」と言っていたけど、僕が脚本を書いた時には、そういうつもりではなかった。でも、それはどちらにも取れるようにしようと。
――作り上げていく課程で、柔軟に変わっていったんですね。
岩崎:脚本をあげて、その後はみなさんで良きように料理してくださいっていう感覚ではありましたね。