白石聖の主演抜擢は大正解の人選! 『恐怖新聞』をナチュラルに“真実”にさせる実力

白石聖は“ひっかかり”だらけの個性派女優?

 つのだじろうの1970年代の名作ホラー漫画『恐怖新聞』(東海テレビ・フジテレビ系)が、ジャパニーズホラーの巨匠・中田秀夫監督×小説家・乙一のタッグにより、「オトナの土ドラ」枠でドラマ化されている。

 実写化と聞いて、まずイメージした人物は、ダウンタウン・浜田雅功だった。『夢で逢えたら』(フジテレビ系、1988年~1991年)のコントの中で、白髪白塗り・着物姿で抱っこをせがむ「うしろの百太郎」を演じていたことと、つのだじろうのキャラデザに近いルックスであることから。現在であれば、泉澤祐希あたりが適役じゃないかと思っていた。

 しかし、実際に主演に抜擢されたのは、本作が連ドラ初主演となる白石聖だ。「そう来たか!」と唸らされる。主人公を女性に変更したこともさることながら、つのだじろうの作画タッチよりも、楳図かずおの描く美少女の方に近い白石聖。しかし、結論から言うと、これは大正解の人選である。

 京都の大学に通う女子大生・小野田詩弦が、念願の一人暮らしを始めた途端、どこからともなく「恐怖新聞」が届くように。そこにはこれから起こる事件や事故が掲載されていて、1日読むたびに100日ずつ寿命が縮んでいく――。

 ともすればトンチキ感溢れる設定と、摩訶不思議なセリフを、この現代においてナチュラルに「真実」にさせることができる白石聖という存在。

 そこには、中田監督ならではの演出効果ももちろんあるけれど、彼女の劇画調の整いすぎた顔面力による部分も大きいと思う。

 「濡烏」のような髪ならぬ、真っ黒で重たそうな艶のある睫毛。大きく、ちょっと虚ろな目。濃い陰影を与える豊かな涙袋。真っすぐ通った鼻筋。小さいのに、妙にぽってりと厚ぼったい、官能的な唇。額の薄い皮膚に浮かび上がる静脈。横顔はモノクロの絵画のように美しくも妖しい。

 それでいて、整いすぎた顔が、決して「お人形さん」にはならない。「目だけ」「口元だけ」のアップは、美しいのに、どこか不穏な空気を醸し出す。特殊メイクなどしていないのに、ホラー漫画特有の顔に走る縦線すら見える。

 青白い肌には血しぶきが非常に映えるし、恐怖にゆがめる顔には、恐ろしさと同時に、どこかユーモラスさもあり、ホラー漫画の見開きカットのような物々しさがあるのだ。

 また、立ち姿や動き方も、なんだか独特だ。第1話では、父の事故死を止めるべく、神社にダッシュする姿が映し出され、その走り方がヘンテコで迫力あることから、SNSでは「ワンパクダッシュ」などと呼ばれていた。

 また、第2話で電車の中、ぼんやりと立っている姿は、中途半端に開いた脚が、無防備な幼女のようにも見えて、不安を掻き立てられる。

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