現代の作り手にとってメタ的な思考は当たり前に? 『素敵な選TAXI』から紐解くバカリズムの作家性

現代の作り手にとってメタ的な思考は当たり前に? 『素敵な選TAXI』から紐解くバカリズムの作家性

 ウェル・メイド・プレイ(well-made play)という言葉がある。演劇用語で「構成が巧みな、よく出来た劇」といった意味だが、現在はフィクション全般に使われており「ウェルメイド」と略して用いられる。

 『素敵な選TAXI』(カンテレ・フジテレビ系)を観た時に最初に浮かんだのはこのウェルメイドという言葉だ。現在、火曜夜9時に再放送されている本作は、芸人のバカリズムが、はじめて連続ドラマの脚本を手掛けた出世作である。物語は竹野内豊が演じる枝分(えだわかれ)という過去に戻ることができるタクシーの運転手が、様々な客を乗せることで起きる騒動を毎回描いているのだが、1話完結で毎回綺麗にまとまっており後味も良い。

 先週放送された第3話は、IT企業の社長・野々山武彦(中村俊介)と不倫関係にある秘書・香西麻里奈(木村文乃)の物語だった。香西は社長に妊娠したと告げたことで別れを切り出されてしまった後、3時間10分前に戻って人生をやり直そうとする。そこで葛西は野々山の妻(笛木優子)の不倫を知り、そのことを野々山に告げることで結婚しようとするが、今度は元恋人の週刊誌記者が現れて脅迫されてしまう。そしてもう一度、枝分のタクシーに乗って時間を遡る。といった感じで物語は進んでいく。

『素敵な選TAXI』第3話より(c)カンテレ

 つまり、時間を題材にしたSFドラマなのだが、面白いのは一種のメタフィクションとなっていることだ。メタフィクションとは「フィクションについて語るフィクション」のことで、つまり『素敵な選TAXI』は、ドラマの形をしたドラマ論だと言える。

 本作では最初に「A→A」(第3話の場合は妊娠を香西が野々山に告げたことで別れを切り出される)という物語のルートを見せた後、時間を逆行することで物語の分岐点を作り「A→B」という別のルートを見せる。

 そしてそのルートの失敗を見せた後でまた遡り、A→Cの物語を見せる。つまり一つの物語に分岐点を設定することで複数の結末を見せていき、最終的に最適解を見せるという作りとなっている。

 これは一人の作家の頭の中にある思考の流れをそのまま見せられているような面白さがあるのだが、同時にとてもゲーム的である。ゲームの場合は分岐したルートをプレイヤーが自分で選択するのだが、本作は登場人物自体がゲームのプレイヤーとなり「ああでもない」「こうでもない」と試行錯誤する姿自体がドラマになっている。そこにゲームの実況プレイを見せられているような楽しさがある。

 こう書くとすごく複雑で難解な話に感じて、ウェルメイドとは真逆の印象を抱くかもしれない。本来、メタフィクションは、前衛的で難解な表現である。しかし『素敵な選TAXI』はメタフィクションでありながら、ウェルメイドな作品として楽しめてしまうのだ。

 これこそがバカリズムの脚本が持つ巧みさなのだが、同時に思うのは、現代の作り手にとって、メタ的な思考が、ごくごく当たり前のことになっているということだ。

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