「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』

今週の編集部オススメは『フリッツ・ホンカ』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、同じ人に2回職質をされた島田が『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』をプッシュします。

『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』

 

シリアル・キラーやサイコを主題とした作品の多さを、最近は感じる。『ジョーカー』(ジョーカー自体はシリアルキラーではないが)や『テッド・バンディ』、『マインドハンター』に『ハウス・ジャック・ビルト』……国内ドラマにおいても『3年A組ー今からは皆さんは人質ですー』『あなたの番です』『ボイス 110緊急指令室』(どれも日本テレビ系)は大きな話題を呼んだ。

 どの作品も扱うテーマは同じながら、そのカラーは全く違うため、こうした事象を一括りにして語ることが可能かどうかは議論の余地があるが、少なくとも再びそうした作品が増えているということ自体は間違いないのではないだろうか。ファティ・アキン監督最新作『屋根裏の殺人鬼フリッツ・ホンカ』もまた、実在したシリアル・キラーが主人公だ。過去作の『消えた声が、その名を呼ぶ』『女は二度決断する』はいわゆるヒューマン・ドラマ的風情の作品だったが、本作でいきなりシリアル・キラーものという幅の広さにまず驚かされる。

 しかし、前述の過去作品と本作には見逃していない共通項がある。『消えた声が、その名を呼ぶ』においては、トルコで最大のタブーとも言われるオスマン・トルコによる1915年のアルメニア人虐殺をテーマにし、『女は二度決断する』ではトルコ系移民である夫がネオナチによる連続テロ事件により亡くなっている。本作においても、ホンカが焦がれる孤独な女学生はトルコ系の移民であり、大きな舞台の一つとなるハンブルクのバー<ゴールデン・バー>は地元における観光名所のような側面もあるようだ。そして何よりゴールデン・バーの常連客は、一癖も二癖もあるような人物ばかりである種の「マイノリティー」のように思える。

 アキン監督自身がトルコ系ドイツ人であるという背景を考えると、カラーは違えどアキン監督は一貫して、映画を通して自身のルーツと向き合っていると言える。監督はなんども一人一人の顔をカメラに収めていく。その撮り方からは、彼、彼女らがその時、その場所で生きていたという事実を記録しようという意図を感じずにはいられない。フリッツ・ホンカは間違いなく本作の主人公だが、アキン監督が何より撮りたかったのは、1970年代のドイツという国、ハンブルクという街だったのではないだろうか。

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