『怪獣ヤロウ』のぐんぴぃは“バキバキ”過ぎてカッコいい 「K.U.F.U」にあふれた映画愛に涙

リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、バウアーおかえり石井が『怪獣ヤロウ』をプッシュします。
『怪獣ヤロウ!』

〈武器はたゆまぬK.U.F.U 常に研究 常に練習 知恵を結集し 君をレスキュー〉
映画『怪獣ヤロウ!』の終盤の展開を観ているときに、RHYMESTERの楽曲「K.U.F.U」が脳内BGMとして流れました。RHYMESTER宇多丸さんが「K.U.F.U」でも唱えている、持っていないやつが持っているやつに勝つ唯一の秘訣であるK.U.F.U=工夫。それが『怪獣ヤロウ』には詰まっていたのです。
古今東西、映画作りについての映画は数多く作られてきました。フランソワ・トリュフォー『アメリカの夜』、ミシェル・ゴンドリー『僕らのミライへ逆回転』、デイヴ・マッカリー『ブリグズビー・ベア』、デヴィッド・リーチ『フォールガイ』……などなど、今挙げたタイトルはいずれも鑑賞時に号泣した作品でした。なぜなら、そこにはまさにK.U.F.Uが詰まっているからです。
今でこそ編集者という仕事を選びましたが、自分もかつて映画を作ることを志したことがありました。映画の脚本を作ること、どんなふうに撮るか考えること、仲間と一緒に議論すること、それらはいずれも死ぬほど楽しいです。でも、それと同時にとてもとても怖かった。そこに自分というものが刻まれ過ぎてしまうから。
もっと気楽に向き合う、あるいはその怖さと対峙し続ける覚悟があれば、また違ったと思うのですが、自分を“持っていないやつ”とみなし、K.U.F.Uからも逃げてしまったのです。振り返ればそれも逃げたではなく、違う道を選んだと、ポジティブに変換できることもまた事実なのですが、ずっと心の片隅に残るものがあります。だからこそ、愚直なまでに己と向き合い続ける人物が主人公の作品には、すぐに目頭が熱くなってしまいます。

『怪獣ヤロウ』も正直舐めていました。定期的に作られる、いわゆるご当地映画で、“バキ童”として有名なぐんぴぃを消費するためのネタ映画なのではないかと。もちろん、ある部分でその要素はありはするのですが、予想に反して映画についての映画だったのです。
まず冒頭シーン。ぐんぴぃ演じる主人公・山田一郎が中学生の頃、学校で自作の特撮映画を上映するシーンから始まります。体育館と思われる場所で、結構人数を前に上映。しかも、映画を観て爆笑、ではなく嘲笑するクラスメイトたち。こんなに恐ろしく辛いことはありません。それでも一郎少年には「全部ぶっ壊せ」と声をかけてくれる先生(田中要次)がいて、彼は「監督になる」と決意。そこからタイトルへ……という開始数分のこの時点でガツンとやられるものがありました。




















