『リズと青い鳥』『若おかみは小学生!』『ガルパン』……傑作を生み出す脚本家・吉田玲子とは

傑作を作り続ける脚本家・吉田玲子とは

湯浅政明は吉田玲子に何を求めたか

『夜明け告げるルーのうた』(c)2017ルー製作委員会

 独特の映像センスでカルト的な人気を博していた湯浅政明監督は『夜明け告げるルーのうた』のパンフレットで、「『夜は短し歩けよ乙女』は自由に作ったが『夜明け告げるルーのうた』は、観てくれる方がどう思うかを優先して想像しながら作っていました」と述べている。

 湯浅政明は吉田玲子に何を求めて脚本に指名したのだろうか。

 吉田は、インタビューで「広い客層に向けたものを、ということ以外に、女性目線で考えてほしいということでお声がけくださったようです」(「月刊シナリオ教室」2017年11月号 P.4)と答えている。また湯浅自身が「吉田さんのアイデアはできるだけどんどん取り入れ」たとも述べており(参照)、ストーリーに関しては、吉田のテイストがかなり活かされた作品だといってよいだろう。

『夜明け告げるルーのうた』(c)2017ルー製作委員会

 例えば、ヒロインのルーが人魚になったのは吉田のアイデアだそうだ。当初はヴァンパイアだったらしいが、「映画館に会いに行きたくなるようなかわいらしいキャラがいいんじゃないですか?」という吉田の提案を受けて変更された。ヴァンパイアという闇の眷属は、いかにもこれまでの湯浅監督らしいアイデアだが、人魚の方がより広く子どもたちにも愛されやすいかもしれない。本作はビジュアルに関しては湯浅政明のセンスが存分に活かされており、ダンスシーンや洪水のシーンなど、監督のセンスが存分に発揮できるシーンもきちんと用意しており、作家の個性もよく理解した上で書かれている。

児童作品でも力を発揮する吉田玲子

 吉田玲子は、映画や深夜アニメだけでなく、児童向け作品でも大きな功績を残している。『おジャ魔女どれみ』や『おじゃる丸』などに参加、2001年のNHKオリジナルアニメ『カスミン』のシリーズ構成も務めている(湯浅政明とはこの時に出会っている)。

 近年のこの路線での吉田玲子の大仕事は、なんといっても映画『かいけつゾロリ ZZ(ダブルゼット)のひみつ』だろう。本作は『かいけつゾロリ』シリーズ30周年記念作品で、原作でも語られることのなかったゾロリ誕生秘話を描いているが、原作者の原ゆたかによれば(参照)、本作のプロットを考えたのは吉田玲子だという。

 ゾロリの衣装のトレードマーク「ZZ」が突如消えてしまい、過去にタイムスリップしてしまうゾロリたち。ゾロリはそこで若い頃の母、ゾロリーヌと出会う。「ZZ」のマークには今は亡き母の愛が込められていたことを知るゾロリ。父と離れ、母を亡くした孤独なゾロリだが、その胸のトレードマークは両親の愛の証だったのだ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を下敷きに、上映時間72分の中に、笑いあり、涙あり、冒険譚ありと多くの要素を詰め込んだスペクタクルロマンで、吉田のストーリーセンスがいかんなく発揮された傑作だ。

 昨年大きな話題となった『若おかみは小学生!』も児童文学の映画化だったが、児童作品に当初は抵抗があったという高坂希太郎監督をアシストする意味で、吉田の経験は重要だっただろう。公式サイトで非常に深遠なテーマを掲げている高坂監督だが、大人も子どもも楽しめる作品に仕上がったのは吉田の貢献度も高いだろう。

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