松村北斗の活躍はドラマでも! 『アンサンブル』の恋愛要素にもたらす“愚直”な演技力

『アンサンブル』 松村北斗の活躍はドラマでも

 出演した映画『ファーストキス 1ST KISS』が話題の松村北斗は、ここ数年、映画界で“無双状態”である。そんなことを別の記事(松村北斗が映画界で“無双状態”に 『ファーストキス 1ST KISS』硯駈役がハマり役な理由)で筆圧強めに書いた。ここで述べたことは、彼が出演した映画をすべてチェックしている方ならば納得してくださるだろう。しかし、彼がひとりの俳優として活動する場は映画界だけではない。そう、現在は主要な役どころを担っているドラマ『アンサンブル』(日本テレビ系)が放送中なのだから。

松村北斗が映画界で“無双状態”に 『ファーストキス 1ST KISS』硯駈役がハマり役な理由

スクリーンに大きく映し出された松村北斗の表情を思い出すたび、不覚にも涙が込み上げてくる。記憶の中にある彼の声が脳内で反響するたび…

 この『アンサンブル』とは、主演の川口春奈が“現実主義者”の弁護士を演じるリーガルラブストーリーだ。主人公・小山瀬奈(川口春奈)は恋愛トラブルの案件を多く扱う弁護士で、恋愛は“コスパ”と“タイパ”が悪いという考えを持つ現実主義者。これには彼女自身の過去のトラウマや、さまざまなカップルのトラブルばかりを目の当たりにする日々が原因となっていた。しかし、第5話まで放送を終えた現段階では、恋愛にかなり前向きなようである。

 その理由のひとつが、彼女とは対照的な“理想主義者”である後輩弁護士・真戸原優(松村北斗)と出会ってしまったから。いつだって“愛”というものを信じている彼は、そんなものは信じるのをやめてしまった瀬奈に、“愛”の大切さを思い出させる。そうしてこれからふたりのラブストーリーが本格化していくことになるようだ。瀬奈にはトラウマがあると先述したが、優にもまたトラウマがあった。幼い頃に大切な人が自分の元を去っていったという経験をしている彼は、相手が誰であれ、“別れ”というものを恐れている。そんな青年なのだ。

 同じくラブストーリーでいえば、公開中の『ファーストキス 1ST KISS』がまさに完全なる恋愛物語を描いたものなのだが、松村は複雑な人間関係から生まれる心の動きを表現するのが抜群にうまい。それも、ごくごく自然で、それでいて私たち観客の胸を打つものである。

 『ファーストキス 1ST KISS』で松村が演じているのは、未来の妻と何度も出会い直す青年・硯駈だ。タイムトラベラーとなった未来の妻・カンナ(松たか子)は、何度も何度も過去の駈の元へとやってきて、“出会い”の瞬間をやり直す。

 映画やドラマなどの映像の現場ではよく、「テイクを重ねると鮮度が落ちる」という言葉を耳にする。同じことを何度も繰り返しているうちに、心身ともに慣れてしまい、新鮮味が薄れていくのだという。これは演技を生業にしていない方でも、理解できる感覚なのではないだろうか。環境の変化や誰かとの出会いはドキドキするものだが、それなりに時間を重ねれば慣れてくるものだ。すると、その場に生じる人間関係からは、緊張感というものが抜け落ちてしまう。関係性の鮮度が落ちてしまうわけである。

 『ファーストキス 1ST KISS』で駈とカンナは何度も“初対面”を繰り返すのだから、「テイクを重ねると鮮度が落ちる」ようでは作品として成立しない。同作が盛り上がっている大きな理由のひとつが、松村がこの鮮度というものを維持し続ける力を持っているからなのだと思う。

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