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『モアナと伝説の海』全米大ヒットの背景は“ロマンス抜き”にあり? ディズニーの作風変化を読む

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 アメリカで11月23日(現地時間)に公開されたディズニーの長編アニメ最新作『モアナと伝説の海』が大ヒット中だ。公開初週末の11月25日から27日にかけては全米で約5,663万ドルを稼ぎ出し、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』を抑えて初登場1位を記録。また、公開初日の興行収入では『アナと雪の女王』や『塔の上のラプンツェル』を超え、公開5日間の成績はあの『ズートピア』を超えてディズニー作品で歴代2位となった。一部からは「ディズニー最高傑作」との声も聞こえる本作だが、これほどのヒットを飛ばしている理由はいったい何なのか。

 『リトル・マーメイド』や『アラジン』で知られるロン・クレメンツ監督とジョン・マスカー監督のコンビがメガホンを取った本作は、ポリネシアに浮かぶ小さな島で暮らす少女・モアナ(アウリィ・カルバーリョ)が、屈強な英雄マウイ(ドウェイン・ジョンソン)と繰り広げる冒険を描く海洋ロマンだ。ディズニーの長編アニメで有色人種の女性が主人公となるのは、『プリンセスと魔法のキス』以来7年ぶりのことで、人間の女性が主人公の長編アニメは、『アナと雪の女王』以来3年ぶりである。

 近頃のハリウッドでは、女性の地位向上が声高に唱えられており、興行的にも批評的にも、成功を収めた作品の中には女性を主人公とするものが多い。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『ピッチ・パーフェクト』シリーズがその象徴と言えるだろう。元より女性主人公の姿を描く映画を多く手掛けてきたディズニーは、改めてこのトレンドに乗るだけでなく、ポリネシア人の女性を主人公とすることで、『ズートピア』や『アナと雪の女王』といった近年のヒット作と同様に、「多様性の拡大」を表現して評価を拡大している。海外メディアのレビューでは、ポリネシア人としてのモアナや、登場するポリネシアン・カルチャーに対して、必ずと言ってよいほど多様性の観点から賞賛の言葉が送られているし、ツイッターで「Moana diversity(モアナ 多様性)」と検索すると、本作の文化的・人種的多様性を称賛する声が多く見受けられる。

 公開に先立って、ドナルド・トランプの次期米国大統領就任が決定していたことも、本作の多様性への注目を高める要因となったように思える。過激発言やモンロー主義的な側面を伺わせることによってポピュリズムを煽り、結果的に次期米国大統領として当選したトランプは、大統領選を通じて、アメリカ国民が少なからず彼の(本音か建前かは不明だが)排外主義的思想に同調していることを証明した。また、たびたび報道される反トランプのデモからは、移民国家としてのアメリカで暮らす人々にとっては、多様性が何よりも重要なことであるという事実も浮かび上がった。トランプの登場によって高まった多様性の議論が、ポリネシア人の主人公を描く本作への関心を強めたと推測するのは強引ではないだろう。

      

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