劇場版『名探偵コナン』は“ファン以外”でも楽しめる? 初心者が『隻眼の残像』を観てみた

『名探偵コナン 隻眼の残像』公開初日となる4月18日8時20分、TOHOシネマズ 新宿の売店は既に長蛇の列であった。土曜日の15時かと錯覚するほどの人の数だ。スタッフもそれ相応の臨戦体制にあり、レジカウンターも平日の朝からまさかのフルオープンである。TOHOシネマズ的にも、この日のために完全に“対コナンシフト”を組んでいるのだ。ということは、このお祭り騒ぎは毎年の恒例行事となっているのであろう。買うか迷っていたポップコーンを諦めて、8時35分開演の映画に全力を注ぐべく劇場に向かう。
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筆者としては、今作が生まれて初めて映画館まで足を運んで鑑賞する『名探偵コナン』シリーズの劇場版となる。劇場版『名探偵コナン』に関する唯一の思い出は、小学校1年生の頃にシリーズ3作目『世紀末の魔術師』(1999年)のイラストがデザインされた消しゴムを使っていたこと。砂消しゴムのような作りだったのか、ただただ異常に固くて消しにくく、たまたま筆箱の中にそれしかない時などは「コナンはハズレの消しゴム」という認識だった。
念のため、前日に母親にLINEで確認したところ、幼い頃に連れていってもらったこともないとの裏も取れたので、今回が正真正銘初めての経験となるのだ。また、あの消しゴムは当時TSUTAYAで配布されていたものらしい。
そもそも、「黒ずくめの組織に体を小さくされてしまった工藤新一が江戸川コナンとして、日常に巻き起こる事件を解決しつつ、徐々に組織の謎も明るみになっていく」という話の流れは理解しているが故に、その黒幕の判明や全ての謎が解決された状態になるまで、原作やアニメにはできるだけ触れないようにしようというのが『名探偵コナン』に対する筆者の基本スタンスであった。要するに、「いつの日か存分に楽しむために、『コナン』が全部終わったら起こしてください」というこだわりの構えである。
テレビをつけたらたまたま放送していた劇場版過去作やアニメの一部を観たことぐらいはもちろんあるので、探偵団や毛利小五郎のような主要キャラは知っているし、「蘭姉ちゃんが強すぎる」と言った半分ネットミーム化しているようなシーンをいくつか目にしたこともある。そんな中で今回、「劇場版『名探偵コナン』初心者が最新作を鑑賞してみた」というテーマである本コラムの話をいただき、折角なので、最新作を鑑賞してみた。

結論から言うと、それでもあまりにも面白い。
まず、大筋となる事件に対する「探偵もの」としての物語の作り込みが本当にしっかりとしている点に驚愕した。話の流れで何気なく出てくる、パラボラアンテナやフィアンセの存在、雪崩、あだ名、押収された銃などの要素やワードがとても丁寧に回収されていく。
さらに、映画館のスクリーンでこそ見応え抜群のアクションシーンも随所に展開される。速すぎるスケボーと圧巻のカーチェイスや、非常に緊張感のある銃撃戦、クライマックスにかけてのド派手な爆発や特大クラッシュなどが用意されており、推理を楽しみながら物語を緻密に追いかけても良し、アニメ映画ならではのダイナミックで刺激満点のシーンをただ眺めているだけでも良し、といった具合に映画そのもののクオリティがまずもってかなり高い。
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ただ、それを前提としても、『名探偵コナン』シリーズが積み上げた100巻越えの原作漫画、1100話以上のアニメ、今作で28作目となる映画という歴史に裸一貫で挑むには、流石に疑問が残る部分が何点かあったということが正直なところだ。
ということで、ここからは予備知識としてあればもっと楽しめたであろう要素を、これから今作を鑑賞する予定の『名探偵コナン』初心者の同志にお伝えしたいと思う。