バカリズムが確立させた“大作家”の地位 『ベートーヴェン捏造』は次の代表作となるか

9月12日より、バカリズムが脚本を務める『ベートーヴェン捏造』が公開されることが発表された。
本作は、聖なる音楽家として知られるベートーヴェンの実像を覆す物語。実は彼が下品で小汚い人物であり、現在の“偉人”としてのイメージは秘書によって演出されたものだったという、ユニークかつブラックなユーモアを帯びた設定となっている。
バカリズムは、これまでにも映画『架空OL日記』(2020年)や『ウェディング・ハイ』(2022年)などで映画脚本を担当してきたが、近年の代表作『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)や『ホットスポット』(日本テレビ系)で脚本家としての評価を決定的なものとした。そんな彼が、ヒット作以降初めて手がける長編映画の脚本だ。
芸人としてのバカリズムから、脚本初期作、そして『ホットスポット』に至るまで、バカリズムのクリエイティブ力を高く評価してきたドラマ評論家の成馬零一氏は、『ベートーヴェン捏造』について、「バカリズムさんが名実ともに“大作家”になる作品になるのでは」と期待を述べる。
『ホットスポット』バカリズムに聞く“リアリティ”の生み方 「絶対重要なセリフは特にない」
「SF史上かつてない小スペクタクルで贈る、地元系エイリアン・ヒューマン・コメディー!」という謳い文句でスタートしたバカリズム脚本…
「優れたコントを生み出し続け、その延長線上のような形でひとつの集大成となっていたのが『架空OL日記』でした。ここで視聴者、業界関係者の多くが、『バカリズム脚本は凄い』と感じたと思います。そこからこれまでの良さを残したまま、テレビドラマ史に残る大傑作となったのが『ブラッシュアップライフ』でした。何度も人生をやり直すというSF設定でありながら、ベースになるのは地元の友達との会話。『架空OL日記』の会話パートは残しつつ、そこにSF設定を加えることで、ドラマ全体のダイナミズムを生み出し、現在を生きる私たちとの思いともつながった。キャストの皆さん全員がハマり役でした。そして、『ブラッシュアップライフ』で上がった期待値をそのままに、東京03の角田晃広さんが宇宙人という設定も、見事に物語に組み込まれていました。スペシャルドラマの『侵入者たちの晩餐』(日本テレビ系)とあわせて、脚本家としてひとつ上の段階に上がったと思います。『次は朝ドラか大河か……』という声も聞こえてきた中での再びの映画。過去に手がけた映画作品とはまた違う、脚本家として成熟した一作に『ベートーヴェン捏造』はなるかもしれません」