『あんぱん』はやなせたかしの実話をどこまで反映? 朝ドラだから描ける嵩の孤独

NHK連続テレビ小説『あんぱん』のサブタイトルは、第3週が「なんのために生まれて」で第4週が「なにをして生きるのか」。『「アンパンマンのマーチ」の歌詞を思わせるサブタイトルが続く。第4週は、のぶ(今田美桜)と嵩(北村匠海)の受験が描かれ、嵩は今週も、叔父・寛(竹野内豊)の問いかける「なんのために生まれて」「なにをして生きるのか」について深く悩み続ける。
嵩が悩みすぎて全体のトーンが暗くなっているが、この嵩の深い思考が、ゆくゆく彼の作風になっていくのであろう。なにしろ、モデルになっているやなせたかしの書いた「アンパンマンのマーチ」が、この生きることを真摯に考えた歌詞だから。昨今珍しいくらいストレートにメッセージ性のある歌詞である。

『あんぱん』もまたメッセージの連打。第20話では「泣いても笑うても日はまた昇る」「絶望の隣はにゃあ……希望じゃ」と寛が語り、ヤムおんちゃん(阿部サダヲ)は「ひとりぼっちも気楽でいい」「どうせ1回こっきりの人生だよ。自分のために生きろ」と言う。「なにをして生きるのか」――のぶは教師を目指し、嵩は医者を目指すことになり、勉強に励む。
だがふたりの成績は悪く、受験まであと半年でなんとかなるのかおぼつかない。賢い千尋(中沢元紀)のちからを借りて勉強が進む。
結果的に、のぶは受かって嵩は落ちた。それを登美子(松嶋菜々子)はのぶが勉強を教わりに来て彼の勉強を邪魔したからだと嫌味を言う。いまからこれだと、ゆくゆくのぶと嵩が結婚したらちくちくうるさい姑になりそうで心配だ。そこまで彼女が出てくるのかわからないが。とりあえず、嵩が入試に落ちたら、登美子はまた御免与町から去ってしまった。

松嶋菜々子の公式コメントによれば、「登美子は、発想が少し独特なのかなと思います。子どもへの愛情がありながらも、自分の人生に迷いがあったり、葛藤を抱えていたり……。演じる上では、そうした心の揺れを理解することが大切だと感じています」とあり(※)、愛情はあるようだ。でも自身の生活も大事で、それを天秤にかけると、まず自分のことを優先してしまう性分のようだ。子どもを産んだ以上は、子どもにもっと愛情をかけてあげてほしい。