『スティーブ・ジョブズ』音楽担当D・ペンバートン、映画3本分に匹敵する作曲の裏側語る
ダニー・ボイル監督最新作『スティーブ・ジョブズ』より、本作の音楽を担当する作曲家ダニエル・ペンバートンのコメントが到着した。
『スティーブ・ジョブズ』は、ジョブズの生涯のうち、最も波乱に満ちた時期に行われた、3大製品のプレゼンテーションの舞台裏にスポットを当てた伝記映画。1984年のMacintosh、1988年のNeXT Cube、1998年のiMacの新作発表会の舞台裏が取り上げられ、それぞれを三章に分ける構成で物語は進んでいく。
三つに分けられたジョブズのドラマをさらに引き立てる、三章それぞれの異なる音楽にも注目が集まっている。今回、ボイル監督が音楽を依頼したのは、作曲家ダニエル・ペンバートン。マイケル・ファスベンダー主演、リドリー・スコット監督の『悪の法則』でワールド・サウンドトラック・アワードを受賞し、ガイ・リッチー監督作『コードネーム U.N.C.L.E.』の音楽も担当している。
ペンバートンは初めて脚本を読んだ時のことを、「見事なセリフの流れで、その波に乗せられたね。読みながら楽譜が頭に浮かんだものの、会話のやり取りを損ないたくないという思いがあった」と振り返る。「この映画の脚本は、どのページもセリフに突き動かされているんだ。そのうちに僕はセリフが映画音楽のソプラノ・パートだと考えるようになった」と、セリフがポイントになると指摘しながら、「セリフは高速で流れ続ける情報の波のようで、一息つく“間”が必要だと感じた。セリフをサポートしてその表面で奏でられる音楽をどうやって作曲するかが課題だった」と語る。
第1幕の音楽を作り始めたペンバートンは、新しい技術に無限の可能性が期待されていた時代背景に合わせて、初期のコンピューターのサウンドをイメージした曲を制作。第2幕はオペラの復讐劇をイメージした二つの楽章が作られ、物語の展開にあわせて気まぐれさと重厚さを表現している。途中で入るコーラスは、本作のためだけにコンピューターをテーマにしたオペラの台本が書かれ、74人編成の豪華なオーケストラで演奏された。そして第3幕には、ジョブズの製品のように余分なものをそぎ落とした、シンプルで美しい楽曲が使用されている。この時代は、あらゆる映画音楽がコンピューターで作曲されていたため、アップルのソフトウェアを使って制作された。
ペンバートンは「ある意味で、オーケストラの楽譜というのは最も古いコンピューターのコードの一つと言えるね」と語り、「コンピューターのコードは指示のようなものだ。オーケストラは最高に素晴らしいコンピューターを手にしてるようなもので、74人の人間が、言ってみればコードのようなものに反応し、個々の性格や感情をそのコードに込める。その効果に勝るものはないから、今も存在してるんだね」とコンピューターと音楽の関係を分析した。
「ジョブズの影響を受けたか」という問いに対し、ペンバートンは「YES」と答え、「ジョブズが作曲家の僕に与えた影響は、オペラ音楽を作曲していたと思ったら、次の瞬間には電子音のデザインやシンセサイザーでの作曲に切り替えられるところだね。今ではたった一人でもあらゆるものを想像して作曲できる」と、ジョブズからの影響を明かしながら、「そして、その一音一音まで、自分の部屋に居ながらにして演奏し、聞くことができるんだ。誤解しないでほしいけど、74人の音楽家が自分の曲を演奏してくれるのを聞くほど素晴らしいものはないよ。でも、彼らに頼らずに自分が作曲した最新の楽曲を聞けるのは最高だね。特に、やっと完成したら朝の3時半だったなんて時は、なおさらだね。これこそが、作曲における自由というものだ」と、音楽制作の魅力を語った。
■公開情報
『スティーブ・ジョブズ』
2016年2月12日(金)全国公開
監督:ダニー・ボイル
脚本:アーロン・ソーキン
出演:マイケル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン、ジェフ・ダニエルズほか
(c)Universal Pictures
公式サイト:http://jobs.gaga.ne.jp/