『HUNTER×HUNTER』クラピカがツェリードニヒに勝つ方法とは? 「幻影旅団」ではない強敵とのバトルを考察

※本稿は、『HUNTER×HUNTER』のネタバレを含みます。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)
冨樫義博の人気コミック、『HUNTER×HUNTER』(集英社)。本稿では、現在進行中(※)の「王位継承編」の“事実上の主人公”ともいうべきキャラクター、クラピカについてあらためて考えてみたいと思う。
※『HUNTER×HUNTER』の連載は現在、不定期掲載の形をとっており、現時点では休載中。次回掲載は未定。
「復讐」という名の「鎖」に縛られた悲しきハンター
周知のように、『HUNTER×HUNTER』という物語には、主人公のゴン=フリークスのほかに、クラピカ、キルア、レオリオという3人の主要キャラが登場するのだが、そのなかで最も知的で冷静なクラピカは、「復讐」という暗い感情を抱えながら生きている――つまり、4人の中で唯一、「過去」に縛られているハンターである(キルアも似たような暗い感情を抱えてはいるのだが、彼を縛りつけているものは、「過去」ではなく「家」である)。
そんなクラピカの人生を語るうえで欠かせないのが、彼の同胞――「クルタ族」の虐殺という悲劇だ。闇の世界で高額取り引きされている「緋の眼」(クルタ族の人間が感情の昂ったときにのみ見せる眼の色は、世界7大美色のひとつとされている)の持ち主であるがゆえに、かつて、クルタ族は「幻影旅団」(※)によって村を襲撃され、全滅してしまった(クラピカは、そのとき、たまたま「外の世界」を旅していたため、襲撃をまぬがれた)。
※「幻影旅団」がクルタ族虐殺になんらかの形で関わっているのは間違いないだろうが、陰で糸を引いていた者が別にいる可能性もある。
親友も、家族も、一夜にして奪われたクラピカに残されたのは、「幻影旅団」への復讐と、奪われた同胞の「緋の眼」をすべて取り戻すという使命ないし執念だった。そして、そんなクラピカの悲しみが投影されているのが、彼の使う念能力である。
強い念能力ゆえの制約
本来は「具現化系」の念能力者であるクラピカが使う「鎖」の能力は、ある意味では「万能」であり、「最強」である。
彼の右手の5本の指に宿る「鎖」は、戦闘、防御、探索、治癒などに使えるだけでなく、敵の念能力を奪うことさえ可能だ。
むろん、この強さと多様さには大きな代償もある。
たとえば、敵を強制的に「絶」状態(オーラが出ない状態)にして、拘束できる究極の決め技「束縛する中指の鎖」(チェーンジェイル)は、「『幻影旅団』相手にしか使えない」という厳しい制約がある。万が一、「チェーンジェイル」を「幻影旅団」以外の人間に使った場合、クラピカは死ぬ。
また、「緋の眼」になったときにだけ発動する「絶対時間」(エンペラータイム)を併用することで、彼は具現化系ではなく特質系の能力者に転身。このことにより、クラピカは、すべての念系統の力を100パーセント引き出せるようになるのだが(この力がなければ、前述のような多様な念能力を使うことはできない)、「絶対時間」の発動中は、「1秒につき寿命が1時間縮む」という大きなリスクもある(とりわけ現在進行中の「王位継承編」では、この能力の連続使用により、数年単位で寿命が削られているものと思われる)。
そう、比喩ではなく、じっさいにクラピカはこの力を使うたびに「未来」を失っているのであり、それは、彼にとって「過去」がいかに大事なのかということの表われでもあるだろう。
そんなクラピカを変えつつあるのが、前述のゴン、キルア、レオリオら、新しい“仲間”たちとの出会いだった。
新しい仲間たちとの出会い
偶然、ハンター試験を受ける過程で出会ったゴンたちと行動をともにしていく中で、クラピカは、復讐だけが自分の人生ではないのではないかとも思うようになる。好奇心旺盛で底抜けに明るいゴン、自分を縛りつけようとする特異な家庭環境から抜け出そうしているキルア、すべてを包み込むような優しさを持った男・レオリオ。そんな彼らとの出会いが、これまで復讐という「過去」にとらわれ続けていたクラピカに、「仲間とともに生きる」という新しい「未来」を想像させるようになっていたのだ。
しかし、「過去」の因縁という「鎖」を断ち切らないことには、クラピカに「未来」はない(そのことは、ゴンたちもよくわかっている)。そして、その「未来」の前に立ちはだかる存在としていま浮上しているのが、カキン王国第4王子のツェリードニヒである。
強敵・ツェリードニヒといかに戦うか
ツェリードニヒは、一国の第4王子という立場にありながら、クルタ族の「緋の眼」をはじめとするさまざまな人体のパーツをコレクションしている異常者であり、他者の苦痛を楽しむ快楽殺人鬼でもある。また、(クラピカはまだ知らないが)おそらく、クラピカの幼馴染・パイロの頭部も秘蔵しており、そのことひとつとっても、両者の激突は避けられないだろう(ツェリードニヒにしても、ただ防戦するだけでなく、むしろ、クラピカを殺して、彼の「緋の眼」を欲しがるのではないかと思われる)。
なお、ツェリードニヒはいま、「10秒先の未来を予知できる」という強力な念能力(“刹那の10秒”/ラプラスデビル)を開花させており、むろんこの能力にもいくつかの弱点はあるのだが、前述のようにクラピカの最強の能力「チェーンジェイル」が、「幻影旅団」相手にしか使えないということを思えば、現時点においてどちらが優勢かは一目瞭然だろう(さらに、ツェリードニヒにはおぞましい念獣もついているのだ)。
そこで思い浮かぶのは、「幻影旅団」の団長、クロロ=ルシルフルの存在である。もし仮に彼がクラピカと共闘し、「本」の力(“盗賊の極意”/スキルハンター)を使うなどして、ツェリードニヒを一時的にでも「団員」にすることができたなら――クラピカにも勝機はなくはないのである(極端な話、クロロがツェリードニヒに対し、「いまからお前を団員として認める」という言葉を発するだけで、「チェーンジェイル」の力は有効になるかもしれない。ただし、クラピカとクロロもすでに敵対関係にあり、この両者が手を結ぶこと自体、かなりハードルが高いのだが……)。
クラピカの「未来」
いずれにせよ、ゴンたちと出会う前のクラピカなら、この先、たとえツェリードニヒとの戦いに勝ち、奪われた仲間たちの「緋の眼」をすべて取り戻したとしても、そこあるのは「虚しさ」だけだったのではないだろうか。
しかし、新しい仲間たちの存在が、彼に、同胞のぶんも「生きなければならない」という「未来」を与えてくれるはずだ。そのとき、はじめて、クラピカは「過去」という名の「鎖」から解き放たれるのだ。
「王位継承編」のラスト、“すべて”を終えて、ゴンたちと笑い合うクラピカの姿を見たいと思っているのは、私だけではないだろう。
[付記]クラピカの性別については、いまだにファンのあいだでさまざまな考察が飛び交っているようだが、また、作者の方でも、あえて曖昧に描いているフシもあるのだが、「クラピカ追憶編」の「あらすじ」で、「少年クラピカ」と書かれていることなどから、本稿では「彼」とした。(筆者)























