『ブルーロック』で高橋恭平が見せた俊足とその輝きーー出演作で振り返る、圧倒的な才能

『ブルーロック』高橋恭平の輝き

実写化俳優としての高橋恭平の圧倒的な才能とは?

 高橋恭平はよく走る。2023年公開の主演映画『なのに、千輝くんが甘すぎる。』では陸上部のエース、現在公開中の『ブルーロック』では俊足のストライカーを演じ、トラック内とピッチ上をあざやかに走り抜けている。

 興味深いことに、特に走る場面を含まない作品でさえ、高橋が演じるキャラクターには常に前に進むという方向性がある。それは作品自体の推進力にもなり、ここに、実写化俳優としての高橋恭平の圧倒的な才能がある。

 たとえば、主人公・佐山うらら(芦田愛菜)の幼なじみ・河村紡役を演じた『メタモルフォーゼの縁側』(2022)は、高橋が走らない作品だが、彼は鶴谷香央理による原作漫画を実写に置き換え、うまく翻訳する“入口”を作っている。

 原作の紡は、自転車に乗ってふらっと現れる。「うらっち」、「つむっち」とあだ名で呼び合う関係性が自然な流れを形成しながら、紡の自転車が走行するその横移動が、(原作漫画の)コマとコマをシームレスに繋ぐ。一方、高橋演じる紡は自転車に乗っていないのだが、自転車の横移動感を自らの身体に取り込むかのように、何ともタイミングよくフレーム外からフレームインする。

 このフレーム外からフレーム内への自然な(横)移動によって、河村紡というキャラクターが実写化映画の中でも実に生き生きと動き出し、作品全体としても漫画が実写に変換される自然な流れを作っている。

フレームアウトする時には光輝く

 漫画のコマと映画の画面。同じ四角いフレームでもメディアとしての形態は異なる。そこを踏まえた上で実写化映画において、生身の俳優がフレームインするという単純な動作を的確にクリアすることがいかに重要なことか。うららが買い物から帰ってくる夜の団地の場面で、「うらっち」と声をかけてサッとフレームインする河村紡役の高橋の完璧な間合いが、そのことを端的に物語っている。

 さらに、陸上部のエースとして素晴らしい疾走感を体現した、『なのに、千輝くんが甘すぎる。』の高橋は、図書館の場面で寝そべっていたソファから身を起こして、画面下からも華麗にフレームインできることを示した。では、逆にフレームアウトする時はどうだろう?

 2025年10月から2026年2月にかけてseason1とseason2が放送された、WOWOWドラマ『ストロボ・エッジ』season1第1話冒頭に置かれた美しい場面を見てみよう。下校途中の電車内、高橋演じるモテ男子・一ノ瀬蓮に恋心を寄せるヒロイン・木下仁菜子(福本莉子)が、うたた寝する彼の横顔を盗み見ている。2人は同じ車両の同じ列、1人挟んで隣に座っている。今日は彼との距離が近い。歓喜する仁菜子が一心に見つめる、蓮の寝顔はエモーショナルな夕日に包まれている。

 最寄駅に到着。慌てて降りようとする蓮が仁菜子のストラップを踏みつけて壊してしまう。すかさず謝り、「弁償します」と言う蓮だが、早く降りなければならない。2人の出会いの場面。この有限のひとときがいい。

 2015年公開の映画版では、福士蒼汰演じる蓮は割りとさっさと出ていく。だが、咲坂伊緒による原作漫画の蓮は、ドアが閉まるぎりぎりまで仁菜子の方を振り向く。高橋演じる蓮は原作寄りだ。そして「降りなきゃ」と言って駅のホームへ出て行こうとする瞬間、寝顔を包んでいた以上に眩いフレアが画面を満たそうとする。高橋恭平がフレームアウトする時、画面は不思議と光輝くのだ。

「千輝」と「千切」の間で…

 画面上で際立ち、輝くキャラクターのイメージは、高橋が出演するあらゆる作品間で共通している。数々のラブコメ漫画原作映画(所謂きらきら映画)を撮影してきた花村也寸志が、自然光をたっぷり取り込んだ主演映画『山口くんはワルくない』(2026)では、室内外の場面問わず、高橋の輪郭を縁取り、令和のラブコメ映画ヒーロー像を浮き彫りにした。

『なのに、千輝くんが甘すぎる。』にいたっては、タイトルロール、千輝彗の役名自体にきらめきを宿した。同作の監督である新城毅彦が得意とする、きらめく陽光が行き渡る画面設計、俳優にしっとり官能的な陰影を与える雨の演出が実写化らしい輝きを表現していた。また、陸上競技大会を終えた千輝がヒロインの元にダッシュするクライマックスには、走る高橋恭平にカメラが並走するシンプルな感動があった。

 そして、この千輝(ちぎら)と1文字違いの千切(ちぎり)は、『ブルーロック』に登場する中で最も寡黙なキャラクターであり、足が早いことを除き、これまでの高橋が演じてきた役柄とはあまりに対照的だ。赤毛の長髪は表情の変化を覆い隠し、金城宗幸による原作でも実写化映画でも序盤はまるで声を発することもなく、輝くキャラクターのイメージはいったいどこにあるのか?

 原作ファンでもある高橋自身もこだわりを見せたという印象的な場面が映画中盤に置かれている。原作では第3巻冒頭で描かれる、モニタールームの場面だ。

 格上チームとの試合に勝利し、興奮覚めやらず眠れない主人公・潔世一(高橋文哉)が、試合の記録を見返すことができるモニタールームにやってくると、モニターの前に千切豹馬が座っていた。観客たちはここで初めて、客観的に試合を分析する千切の顔をまじまじ眺めることになる。その顔は(おそらくピッチのグリーンを反射した)緑色の光に照らされていた。眩いフレアでもさわやかな陽光でもない、静かな緑色だ。だが控えめなわけでもない。

 その確かな輝きは、『メタモルフォーゼの縁側』以降の出演作を見つめた時、『なのに千輝くんが甘すぎる』の千輝と『ブルーロック』の千切の間で、高橋恭平がいくつもの光輝くイメージを共有してきたことに気付かせてくれる。

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