『ブルーロック』主演・高橋文哉、第二の実写化王子となるか? 山﨑賢人とは異なる“新路線”を考察

令和の実写化俳優として新路線を開拓中
平成は2019年4月30日に終わり、令和は2019年5月1日から始まった。漫画作品を原作とする実写化映画の変遷を考えた時、山﨑賢人主演の『キングダム』が2019年4月19日に公開されたことがあまりにも象徴的だ。同作の公開日が平成と令和をちょうど橋渡しする形となり、2020年代の実写化時代到来を告げる潮目になった。
2010年代半ば頃の山崎は、『ヒロイン失格』(2015)や『オオカミ少女と黒王子』(2016)など、少女漫画を原作とする所謂きらきら映画のトップランナーとして、「実写化王子」という異名を取った。この異名は、少女漫画におけるわかりやすい王子様像と日本映画のヒットの目安である10億円を突破する興行面での栄光を反映していた。
ところが、興行収入5億円にも達しなかった『ママレード・ボーイ』(原作は吉住渉による少女漫画)が公開された2018年を境に、きらきら映画興行は下火となる。さらに、38億円を超える大ヒットとなった2021年公開作『花束みたいな恋をした』で、日本映画は等身大の恋愛映画に回帰し、きらきら映画は完全にオワコンになった。
製作本数自体が激減する中、『キングダム』をきっかけに山﨑は、青年漫画を原作とする実写化映画へと軸足を移していくことになる(2020年公開の主演映画『ヲタクに恋は難しい』の原作はラブコメ漫画だが、少女漫画ではない)。実写化王子はあくまで平成の寵児だった。
では、この令和に、新たな実写化王子となり得る存在はいないのか? そう問われれば、山﨑の時代とは違う(出演)路線を開拓中の高橋文哉がいるとひとまずは答えたい。
高橋文哉は第二の実写化王子なのか?
2001年生まれの高橋文哉は、2019年放送の『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日系)で初の21世紀生まれのライダー俳優となった。同作は改元後第1作目の仮面ライダー作品でもあり、まさに令和のヒーロー像を世に問うものだった。2023年公開の主演映画『交換ウソ日記』では、令和のきらきら映画になり得るかに見えるのに、あくまで“恋愛映画初主演”という表記が使われ、“きらきら映画初主演”とは言われなかった。そもそも原作が少女漫画ではない。櫻いいよによるケータイ小説が原作であり、作風も平成後期のきらきら映画よりは俄然トーンダウンし、画面のスタイルもクールな仕上がりだった。
あるいは、2024年公開の出演作『からかい上手の高木さん』も、山本崇一郎によるラブコメ漫画が原作ではあるものの、恋愛映画の名手・今泉力哉のリアリズム志向の演出と俳優たちの存在感が際立つロケーションの魅力によってきらきら感が抑制され、やはりきらきら映画にジャンル分けできる作品ではなかった。『お嬢と番犬くん』(2025)や『山口くんはワルくない』(2026)など、少女漫画原作の実写化作品への出演を着実に重ねる岩瀬洋志は、高橋の所属事務所A-PLUSの後輩俳優だが、むしろ彼の方がかつて王道だったきらきら映画路線をなぞる印象が強く、今後、岩瀬がきらきら映画に主演するのかも含めてその動向が気になる。
一方、ドラマ作品に目を向けると、高橋がまだ顔見世興行の段階にあった、2021年放送のドラマ『着飾る恋には理由があって』(TBS系)では、インテリアメーカーに入社した令和のぴちぴち新卒広報社員役を演じ、彼が醸し出す甘く爽やかな雰囲気が、TBS火曜10時枠のラブコメ路線と見事にマッチしていた。ただし、やはり同作も少女漫画原作ドラマではなく、金子ありさによるオリジナル脚本だ。絵に描いたようにキュートなビジュアルは、確かに「王子」という呼び名が相応しいように思うのだが、かといって日本映画のトレンドが変化する中で、2010年代の感覚を素直にスライドして第二の実写化王子と呼ぶには、時代の温度差もある。
高橋は常に、きらきら映画的な作品や要素とニアミスしながらも、『ブルーピリオド』(2024)や『SAKAMOTO DAYS』(2026)、『フェルマーの料理』(TBS系、2023)や『伝説の頭 翔』(テレビ朝日系、2024)など、映画、テレビドラマ問わず、(青)少年漫画原作の実写化作品に率先して出演していく新路線(方向性)を確立しつつある。その意味で、2026年8月7日から公開中の『ブルーロック』は、令和の実写化俳優としてのスタンスを示して余りある。
『ブルーロック』で悟りを開いた座長感
2018年、『ブルーロック』は、週刊少年マガジンで連載を開始した。2021年の第45回講談社漫画賞では少年部門を受賞し、全世界での発行部数は4000万部以上を誇る。日本全国から精鋭300人を召集し、ワールドカップで日本代表が優勝するために必須のストライカー1人を養成するストーリーは、読者であるサッカー少年やサッカーファンだけはなく、現役のプロ選手にも大きな夢と興奮を掻き立てさせる。実写化映画の公開日が夏休み期間中に設定されたこともあり、劇場には小中学生の観客が散見される。彼らの中には当然、実際にプレーする人も多いだろうし、いつか日本代表選手になりたいと夢を抱いている人もいるかもしれない。
だからこそ、主人公・潔世一は、サッカー少年たちの夢を自然と仮託できる等身大のキャラクターである必要があった。300人の精鋭たちはリアルタイムでランキング化され、養成施設「ブルーロック」にやってきた当初の世一は下から2番目の299位だった。彼はチームメイトから自分の強みを聞かれてもすぐには答えられない。他の猛者たちに比べて突出したテクニックがあるわけでもない。それでも自問自答を繰り返す世一が、もがきながら勇壮無比な独自性を発見する様に共感できるのだ。こうした主人公の成長過程の中で、高橋文哉の演技もまた徐々に凄味を帯び始める。
原作、映画ともに冒頭場面で挫折を経験した世一が、精鋭300人に選抜される初期設定は、人気少年漫画をテレビドラマ化した『フェルマーの料理』で高橋が演じた数学と料理の天才役にも共通するものであり、高橋は挫折からその挫折を一気に転換する才能を開花させる役柄がよく似合う。1000人のヤンキーを束ねるヤンキーの長とヤンキーにカツアゲされてばかりいるいじめられっ子を一人二役で演じた主演ドラマ『伝説の頭 翔』でもそうだったが、最初は一見、弱々しく頼りないのだが、才能を開花させた途端にダークな面すら垣間見せる、緩急とメリハリの演技が特徴的だ。
その上で、『ブルーロック』の高橋は、他のキャラクターに比べビジュアル要素も極めて控えめながら、白熱の試合場面のピッチ上では何もかも超越したかのように静謐なムードを湛え、役柄の成長を表現しながら高橋自身もまた俳優として演技の悟りを開いていくような気迫がある。本作の高橋文哉には、令和の実写化俳優は、自分が背負っていくのだという気概を示す座長感がみなぎっている。



















