【漫画】董卓の肥満はストレスが原因……? ifの三国志をユーモラスに描く『三国志凶漢伝 暴食の董卓』

【漫画】董卓の肥満はストレスが原因……?

 「肥満のあまり、死後へそに置かれたロウソクが3日間消えなかった」――そんな逸話すら残る後漢末期の武将・董卓。漫画『三国志凶漢伝 暴食の董卓』は、その暴食を現代的なストレスのメタファーとして捉え、ユニークな切り口で新たな三国志世界を提示する。

 この第1話が「部下の大事な物を食べちゃった上司の末路」としてXでも人気だ。そこで作者・杉山惇氏さん(@atsushisugiyama)のグルメと三国志、ユーモアと考証が交差する創作の裏側を聞いた。(小池直也)

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『三国志凶漢伝 暴食の董卓』(杉山惇氏)


――Xに投稿してみていかがでした?

杉山惇氏(以下、杉山):三国志好きの人に知ってもらえるきっかけになった気がします。董卓が主人公の漫画が珍しいので注目してもらえたのかなと。

――グルメ漫画にしたのもユニークだと思いました。

杉山:1話目だけはグルメものとして描いています。『三国志演義』だと持ち主がどんどん変わっていくんですけど、正史だと赤兎馬が登場するのは1度だけ。だから本作のような描き方でもあながち間違いではないんですよ。

――なぜ董卓を主人公に?

杉山:自分の作品はキャラクターが弱いなと思っていたんです。それを補強する目的で歴史上の人物を使おうと考えて、子どもの頃から好きだった三国志に目を付けました。

 でも三国志漫画って出尽くしてるので曹操や劉備にスポットを当ててもつまらない。だからマイナーだけど気に入っている董卓を題材にしました。

――ストーリー展開はどのように考えていきましたか。

杉山:とにかく彼は太っていたらしいんですよ。「死後、腹に刺したロウソクが肥満のため3日消えなかった」という面白い逸話があるくらい(笑)。その理由がストレス太りだったんじゃないかと思ったんです。もしそうなら、現代人の問題と重なるなと。

 それを切り口に董卓が政治的なあれこれを苦に暴食してしまうのを、政策の失敗なども含め『しくじり先生』的に描けたらと思いました。

――考証についてはいかがですか。

杉山:この第1話を描いたときは特に気にしなかったのですが、第2話以降は説得力を持たせるために三国志研究の第一人者である早稲田大学・渡邉義浩教授にアドバイスをもらいました。「間違ったことは描いていないから自信を持ってください」という言葉に励まされた思い出があります。

 あとはそのときに争いではなく、政治的内情や倫理観などの観点で見る三国志の面白さに気付いたんですね。そこからは董卓伝の正史をより深堀っていくにあたっての意識が変わったと思います。

――2話目から方向性が変わる?

杉山:1話目だけだと「赤兎馬を食べるグルメ漫画」に見えると思うんですよ。これはこれでキャッチーでいいんですけど、赤兎馬を超える飯がもうないじゃないですか(笑)。だから2話目以降は董卓のストレスについて深堀りした、歴史漫画的な内容になっていきます。

――作画で意識していることはあります?

杉山:読みやすさですね。あまりゴチャゴチャさせないこと。あとは「いつも通りしっかり」という感じで常に全力です。でも今まで食べ物を描く機会が少なかったので難しいなと思いました。

 あまり資料がないのですが、三国志時代の料理って鶏肉のスープや大根の酢物、きゅうりの漬物、炙った肝臓、小麦粉をこねた麺など、意外と質素だったみたいですね。漫画では美味しそうな中華風に少し盛って描いてます。

――そう考えると、よく董卓はここまで肥えることができましたね?

杉山:もともと体格が大きかったこともあると思います。あとは董卓の時代って後漢末期で思うような政策もできないし、朝廷内の階級争いもすごい。文官たちは叩き上げの董卓を認めなかっただろうし、心労は計り知れなかったと思いますよ。それで今でいうドカ食いをしていたのだろうと。

 さらに上の階級になると現場の指揮などが仕事のメインになって、運動もしなくなるからそれも太った原因なのかもしれません。そういう点で現代人に共感してもらえると感じます。

――今後『暴食の董卓』はどう描いていきますか。

杉山:これから反董卓連合などが出てくるので、盛り上げていけたらと思ってます。あとは長く続けたいですね。最近は三国志の界隈が停滞している気がするので、この世界に触れるきっかけになるような作品にしたいです。

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