ちいかわ、マインクラフト、うんこ、はなまるうどん……子ども向け学習ドリルの進化がスゴい

ちいかわ、うんこ……学習ドリルの進化

 ちいかわ、マインクラフト、スシロー、ドラゴン、ミスタードーナツ、妖怪、はたらく細胞、うんこ、ポケモン、ガリガリくん、メゾピアノ、はなまるうどん、転生したらスライムだった件……これらの名称に共通するものは何か、すぐに答えられる人はさほど多くないのではないだろうか。正解は「全て子供向けの市販学習ドリルの題材になっている」である。

 夏休みといえば、学習用ドリルのシーズンだ。とりわけ一ヶ月以上自宅で過ごす小学生には、自宅での学習の題材として各種ドリルが欠かせないものとなっている。これらドリルの中には昔ながらの淡白なものや、回答の記入のしやすさのために大判で作られたものなどもあるが、書店で目を引くのがさまざまなキャラクターやコミックやアニメ、はたまた飲食チェーン店や子供向けブランドを題材としたドリルである。

 その対象はとにかく幅広い。ドラえもんやポケモンといった超有名IPから、ちいかわやすみっコぐらしといった近年のヒットキャラクターは当然網羅されている。問題やイラストが全部うんこに関連しているという『うんこドリル』シリーズも、一見キワモノながら大ヒット作として書店の棚の一角を占めている。『はたらく細胞』や『SPY×FAMILY』といった、小学生に人気のあるコミック・アニメも、当然ながらドリルになっている。

 これらのドリルに掲載されている問題は、基本的には昔ながらのスタイルだ。国語であればひらがな・カタカナ・漢字の書き取りや文章読解、算数であれば足し算引き算から各学年の指導内容に応じた分数の計算や図形を扱った問題まで、現在38歳の自分が見ても意外なほど変化していない。ページをめくれば「こういうの、小学生の時にやらされたなあ……」という気持ちになる。

 一方で、最近のトレンドを感じるものもある。一番驚いたのは、近年では「プログラミング」のドリルが普通に子供向けの課題として販売されている点だ。また、読解力を鍛えるために問題文がストーリー仕立てになっており、それを「謎ときする」という形で子供の興味をひく作りになっているものもある。他にもイラストを見てそのイラストを題材にした短い作文を書いて文章力を鍛えるものなど、文章の読み解き・作成を集中して鍛えるドリルにも需要があるようだ。

 では、これらのドリルに対して多彩なキャラクターはいったいどのように絡んでいるのだろうか。まず多いのは、キャラクターなどのシールが付属しているものである。問題用紙とは別にシールを貼るページが付いているドリルが多く、回答したページに対応したシールを貼っていく作りである。また、学研の『ドラゴンドリル』シリーズは魔法書やダンジョンをモチーフとしたページのデザインになっており、解けた問題に対応したシールを貼っていくとドラゴンのイラストが完成する作り。ゲーム的な演出も含め、小学生のハートを直撃する設計となっている。

 これらのキャラクター系学習ドリルは、勉強を少しでも楽しいものにしようとするゲーミフィケーションの一種だろう。前述の『ドラゴンドリル』はRPGのゲームデザインをドリルに応用した例だが、そもそも『マインクラフト』など直球でゲームを題材としたドリルも販売されている。また、問題そのものを笑えるものにしてとっつきやすくする『うんこドリル』シリーズはゲーミフィケーションとはちょっと違うが、「問題を解く」という行為に嫌悪感を抱かせたくないという目標は一致している。

 さらにこれらのドリルが企業のプロモーションにもなっている、という例もある。学研の『人気メニュードリル』は、まさにその好例と言える。このシリーズは現在「ひらがな・カタカナ」「はじめての分数」の二冊が発売されており、「ひらがな・カタカナ」ではスシロー、サーティワンアイスクリーム、はなまるうどん、「はじめての分数」ではピザーラ、サーティワンアイスクリーム、不二家の各商品が題材となっている。

 このドリルでは、例えば「ひらがな・カタカナ」では書き取りの問題がコラボしている各社のメニュー名になっており、ページ内には各商品の写真も配置されている。また、「はじめての分数」でコラボしている各社は、ピザやケーキのような切り分けて食べる食べ物や、アイスのバラエティボックスのような複数の食べ物を人数分に分けて食べる形式の食べ物を売っている。その点を活かして、分数に関する考え方や計算方法を学ぶことができるという内容だ。アイスや回転寿司やピザを扱うチェーン店は、子供にとっても身近なものだろう。そういった馴染み深い題材で勉強することができると同時に、企業にとっては商品のプロモーションにもなっているという、一挙両得のドリルである。

 このように、独自進化を遂げつつある学習用ドリルの世界。実際のところ「現時点で思いつけるものはなんでもある」という状態であり、今後も小学生のトレンドを追って年度ごとに変化していくであろうジャンルである。書店に行ったらちょっとだけ参考書の売り場を見てみると、その多様性に驚くはずだ。

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