パチンコ海物語、変な間取り、サマージャンボまで……出版界の隠れた人気ジャンル「脳活」本の充実ぶりがスゴい

ふたつの絵を見比べ、相違点を探す「まちがいさがし」。近年は「脳活」と銘打ち、高齢者向けの手軽な遊びとして数多く出版されているのはご存じだろうか。直近では、イースト・プレスから『海物語のまちがいさがし』が出版されている。タイトルの通り、パチンコの「海物語」を題材にした一冊だ。
まちがいさがしといえば、幼児向け雑誌などでは定番のゲームである。子供の頃に遊んだ人も多いはずだが、近年は高齢者からの需要も多いジャンルとなっている。集中力・注意力・記憶力のトレーニングとして数多く「まちがいさがし本」が出版されており、その多くは書店の中の懸賞付きクロスワード本・パズル本のコーナーに並んでいる。
集中力や注意力にも関係するため、こういった高齢者向けまちがいさがし本には制限時間が設けられているものもあり、指定された個数の間違いを短時間で見つけなくてはならない。やってみると意外に難易度が高く、なるほどこれは脳トレになるはずだ……と納得する内容となっている。
これら高齢者向けまちがいさがしの大きな特徴が、その題材だ。
多くは懸賞付きパズル本と同じような体裁で出版されているが、世界文化社から出版されているまちがいさがし本には昭和の暮らしや出来事、童謡や唱歌をテーマにしたものもシリーズ化されている。これなどは、高齢者向けの脳トレ本としてわかりやすい。
パチンコをテーマにしたまちがいさがしというのも、そういった高齢者向けのネタ選定と言えるだろう。もちろんパチンコは年齢を問わない娯楽だが、それだけに高齢者にもファンが多く、有名機種である「海物語」のまちがいさがしが出版されているのも頷ける。
もうひとつ定番としてよく見られるのが、犬や猫といったペットや動物をテーマにしたまちがいさがしである。こちらは文響社から数多く出版されているもので、可愛い動物の画像を見比べながら間違いを探すというもの。イラストではないため間違いが明確に発見しづらく、思いのほか難易度が高い。

あらためて書店でこういった高齢者向けパズルムックを見てみると、意外なほどの点数が出版されていること、それも中規模以下の特定の出版社によって大量に刊行されていることに気付かされる。刊行点数もその内容も多種多様であり、それだけ売り上げが固いジャンルであろうことは想像がつく。
現在、40〜50代以下の人が暇を潰そうと思った時、これらまちがいさがし本を手に取ることはあまりないだろう。一方で、ある程度以上高齢の人にとっては、スマホなどのデバイスやネットが必要な娯楽の需要は決して高くないはず。脳トレというわかりやすい目的と、反射神経が必要なく誰でも取り組めるという条件が揃ったまちがいさがしは、高齢者にとっても出版社にとってもありがたいジャンルのはずだ。昭和の出来事からパチンコに動物、間取りまで、幅広いテーマに沿って堅調に出版されているまちがいさがし本は、まさに出版業界の現状を象徴するジャンルなのかもしれない。






















