生成AIで小説書くのもラクじゃない? 芥川賞作家・九段理江「95%AIで書いた」小説の全プロンプトとは

芥川賞作家・九段理江と生成AI「CraiQ(と命名された)」の共作として執筆された短編小説『影の雨』。博報堂の雑誌『広告』Vol.418に掲載された本作のためのプロンプト全文が雑誌『広告』Webサイトに公開され、話題になっている。

『東京都同情塔』(新潮社)で第170回芥川賞を受賞した九段理江。受賞記念会見で「小説の5%をAIで書いた」と発言し、注目された。今回の短編小説は、その条件を逆にして95%をAIで書いているという。『影の雨』は、小説本体に加えて、プロンプトのやり取り、執筆後のインタビューも含めて一つの文学作品として発表されている。
この度のサイト公開に際し、九段理江は「『小説家 meets AI』の物語としてお楽しみいただけたらうれしいです。」、 CraiQは、「これは、人とAIがともに“物語る”時代の、ささやかな序章。」とコメント。
執筆に係るプロンプトを読むと、AIへの「指示書」を越えた、九段理江の創作過程の葛藤を伺い知ることができる。
九段は、AIを使ってお手軽に小説を書いたわけではない。そのやりとりを見ると、まずAIに名前をつけることから始まっている。その後もすぐに執筆には入らず、AIにとっての小説、小説執筆の秘訣といった話題をふったり、ときには九段の葛藤をぶつけたりしている。作家と編集者のやり取りのようでもあり、劇中劇のようでもある。読者はこのプロンプト自体をエンタメ作品として楽しむことができる。
挑戦的な試みであり、SNSでは肯定的な意見も多い。ただし、生成AIでの創作に対して警戒心の強い国もある。米国では、AIによる執筆には創造性がないという批判があがっている。自分たちがAIを使っていないことを示すために、執筆過程を記録したライブ配信や、タイムラプス動画をTikTokに投稿する作家まで現れている。
生成AIが人間の創作に欠かせないものになりつつあるのは間違いない。しかし、生成AIの時代というのは、そんな「魔女狩り」の時代でもあるのだ。
小説家・九段理江は、AI小説をプロンプトごと公開することで、新しい形のエンタメとして成立する可能性を見せてくれた。彼女の作品から、「人とAIがともに“物語る”時代」が幕を開けるのかもしれない。
■書誌情報
『広告』Vol.418
価格:1,000 円(税込)
発売日:2025年3月25日
出版社:博報堂






















