『はたらく細胞』『もやしもん』『Dr.STONE』 理系マンガからしか得られない学びがある

『はたらく細胞』など 理系マンガで学びを

 奈良女子大学の理学部が2024年11月に開いた「サイエンスオープンラボ」。微生物を観察するイベントに小中学生の長蛇の列ができ、盛況だったそうだ。

「うわっ、ゾウリムシがいっぱいいる」
「緑色のボルボックスがきれい。くるくる回っている」

清水茜『はたらく細胞』(講談社)

 子供たちが生物学に夢中になっている理由は、あるひとつのマンガ作品だった。清水茜の『はたらく細胞』(講談社)は、体内の細胞をキャラクターとして擬人化し、病気との戦いや健康の維持をユーモラスに描いており、アニメ化をきっかけに子供たちにも浸透した。

 子供にとって少しとっつきにくい生物学や免疫学も、マンガやアニメなら楽しく学ぶことができる。こういった理系マンガが教育現場に与える影響は大きい。

 2004年から『イブニング』(講談社)で連載された石川雅之の『もやしもん』。肉眼で菌を見ることができる主人公を中心に、農業大学の学生生活を描いている。デフォルメされた菌たちがなんともかわいい。リアルな発酵食品や日本酒、研究描写も注目され、理系進学のきっかけになったという読者も少なくない。

 『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された『Dr.STONE』(原作・稲垣理一郎、作画・Boichi)も人気が高い理系マンガだ。人類が石化したあとの世界で、主人公が科学の力を使ってゼロから文明を作り上げていくという異色のSFサバイバル。石鹸や電気、鉄や抗生物質といった技術がどのように作られるのかを物語に組み込んでいる。東京工科大学は、この夏のオープンキャンパスで『Dr.STONE』とコラボレートすることを発表している。

 これらの作品に共通するのは、教材のように知識を詰め込むのではなく、エンタメ作品として自然科学を理解させる点だ。専門用語や科学的思考がストーリーの中で生き生きと描かれ、子どもたちはそれを「勉強」とは思わずに楽しんで吸収していく。親しみやすいキャラクターや感情移入できる展開が、理科を「自分ごと」として感じさせるのだ。

 また、こうしたマンガには男女問わず活躍するキャラクターが登場し、「理科=男の子向け」という旧来のイメージを覆している点も評価されている。

 子どもが科学や生き物に興味を持ち始めたら、まずはマンガを一緒に読んでみるのもおすすめだ。理系マンガは、楽しみながら学ぶ知識の入口として、これからの学びを支える存在になりそうだ。

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