映画『国宝』大ヒットで“伝統芸能ブーム”到来? 能をテーマにした漫画『シテの花』に注目

『国宝』大ヒットで注目の漫画『シテの花』

意外と知らない? 歌舞伎と能の違い

 歌舞伎と能はどちらも伝統芸能と一括りにされがちだが、その成り立ちや特徴は大きく異なる。歌舞伎は江戸時代の町人文化の中で育ち、大衆の娯楽として支持を集めた。一方、能は室町時代に武家社会で格式高い式楽として愛され、静けさや象徴性を大切にしてきた。能の舞台では、面をつけた演者が最小限の動きと声で心情を表し、夢幻の世界を描く。歌舞伎は隈取りや白塗り、派手な衣装、大げさな所作で観客を圧倒し、江戸の町人の物語や勧善懲悪の劇が多いのが特徴である。こうした違いを知ったうえで両者を見比べると、それぞれの芸が持つ独自の美しさがより鮮明に見えてくる。

 近年、能はバラエティ番組や人気アニメともコラボしている。「芸能人格付けチェック」(テレビ朝日系)では能楽が問題に出され、出演映画の役作りで1カ月間能を学んだGACKTが見事正解し、連勝記録を更新したことも話題となった。また、国民的作品『鬼滅の刃』と能楽堂の特別公演が企画され、大勢の観客を集めたことも記憶に新しい。こうした動きは単なるブームではなく、伝統芸能が新しい形で次の世代に届き始めている証と言えるだろう。

 今、これまでなじみが薄かった伝統芸能の文化が、「新たな娯楽表現」によって現代の若者の心にもしっかり届き始めている。これからどんな形で未来へ受け継がれていくのか。

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