「東大京大で1番読まれた本」は本当におもしろいのか? 『論理的思考とは何か』が学生に読まれるワケ


著者の渡邉は、アメリカ留学時に経験した文化衝突について語る。提出するエッセイが「評点不可能」として教授から何度もつき返された。何かがおかしい。ためしにアメリカ式の論文構造でリライトしたところ、評価は一転、三段跳びで良くなった。そう、アメリカにはアメリカの作文スタイルがあったのだ。
資本主義国家アメリカの論理は「経済」、つまり利潤拡大という目的に適した思考法をとる。同様にフランス、イラン、日本といった国々にも固有の目的があり、それに適した論理があるというわけだ。比較文化研究者の著者ならではの視点である。
渡邉は「論理的思考は目的に応じて形を変えて存在する」と結論する。論理的思考法はひとつだけだと思いがちなわたしたちへの一喝だ。
自己研鑽のために留学を意識する学生はいまも少なくない。本書はそんな若者のニーズにも応えてくれるだろう。東京大学の大学院工学系研究科では、2025年度より一部の授業を英語で実施すると発表し、話題となった。授業は英語になる、では思考法はどうセッティングすればよいのか? 本書を読み終えたあとは、そんな疑問も浮かんでくる。
『論理的思考とは何か』が学生に読まれるワケ。SNSやYouTubeで話題になったり、新書、文庫といった手頃さだったりも要因の一つだろう。しかし、それだけではベストセラーにならない。物事をどう考え、どう表現すればいいのか。そんな素朴な疑問に答えながらも、時流の変化に適応している本こそが、これからも学生たちに読まれ続けるのかもしれない。

























